日野くんに、彼女がいるのだろうか。

 彼は引く手あまただろうけど、恋人がいるならいくらクラスメイト同士とはいえ、買い出しに私を誘うことはしない気がする。

 それに、マグカップだって好きな色がなく、私の好きな色を選ぶくらいだ。彼女がいるならその子の好きな色にするだろう。

 でも、彼女はいないと思うよと伝えようにも根拠は言えない根拠なわけで、口を噤んでいると美耶ちゃんの後ろから八百屋のおじさんが現れた。

「お前この間野球坊主と同じ傘で帰ってたじゃねえか」

「え、お父さん見てたの!?」

「当たり前だろうが! 店番してたら! こそこそこそこそ端のところで別れやがって。親に会わせられねえような奴なら、俺は認めねえからな!」

「そんなんじゃないってば! ただの同級生だから」

 顔を真っ赤にして怒る美耶ちゃんを見て、おじさんは拗ねた声色で複雑そうに声を荒げた。

「んなこと言ったって、あっちはどうか分かんねえだろ! 相合傘してお前傘ん中入れてやって、自分の肩ずぶ濡れにしてたんだからな! お前に気がねえわけねえだろうが」

「ああああ! もう! お父さんはあっち行ってて! 私は瑞香ちゃんとお話してるの!」