お弁当を食べ終え空き教室を出る支度をしていると、日野くんは窓の外を眺めていた。外は暗く灰色の絵の具をべったり塗ったみたいにどんよりしているのに、彼は対照的に楽しそうだ。 「……どうしたの?」 「今年の夏が、楽しみだなあと思って」 日野くんの視線の先を辿ると、外に植えられている紫陽花が咲きかけていた。もうすぐ梅雨が来る。彼の横顔に視線を合わせるとどこかうっとりしていて、私は理由のわからない不安を抱いたのだった。