「いや、俺この間ぶつかって五十嵐の筆箱壊しちゃったじゃん。だから好み聞いて代わりの買ってこようと思って……」

 河内くんは申し訳なさそうに俯く。私は「大丈夫だよ」と首を横に振った。

「実は新しいものにしたんだ。だから平気だよ」

「えっ……、あっ、じゃあ弁償する!」

「ううん。気にしなくていいよ。私も不注意だったし、お互い様だよ。二人とも怪我しなくてよかったってことで」

 私の言葉に彼は「でも……」と納得いかない顔だ。しかし何度かやり取りを繰り返していくと、伏し目がちに頷いた。