「そういえば」

 日野くんが思い出したように立ち止まると、両手に持っていた紙袋の一つに手を入れた。そして何か、ベージュ色の包みを抜き出す。

「良ければこれ貰ってくれない? 今日のお礼」

 差し出された包みを見つめていると、彼は私の手を引いてそれをのせた。今日のお礼と言われても、私はただ食器選びを手伝っただけだ。物を貰うようなことなんてしていない。

「受け取れないよ」