「あー! いいな! この雑誌買えたの? 私買えなかったんだ!」
「この雑誌、そんなに売り切れるような雑誌だっけ?」
「珱介《ようすけ》が表紙だからだよ! ほら」

 美耶ちゃんが雑誌の表紙を指差すと、その顔を見た八百屋のおじさんは首を傾げる。

「この兄ちゃん、どっかで見たことある顔だなあ」
「当たり前だよ! 私の部屋にポスター貼ってあるでしょ! っていうか珱介天高生(あまこうせい)だよね? いいなあ瑞香ちゃん! 羨ましい!」
「そうかなぁ」

 雑誌の表紙を飾り美耶ちゃんの言う、「珱介」は、本名、日野珱介くん。私のクラスメイトだ。

 モデルをやってるとは聞いたことあるけど、いつも女子に囲まれてる人以外のイメージがない。どんな顔かはクラスメイトだから分かるけど完全に付録に目がいって、表紙なんて一切気にしてなかった。

「なら、これあげるよ。ただ付録のところだけ切り取ってもいい?」
「うっそいいの!? やったあ!」
「本当にいいの? 瑞香ちゃん」