日野くんは周囲の視線を一切気に留めず、軽い足取りで歩いて行く。とりあえず、この場を離れた方がいい。私がそのまま日野くんについて行くと、彼は私に歩幅を合せてくれた。

「俺の事務所さ、使えないと思われたら秒で切られるんだけど、その分商品価値があって実力見せてれば、週刊誌に何枚写真撮られようが結婚しようが、大丈夫なところなんだ。それに俺、おいおい海外に拠点絞ろうと思ってるから、ある程度騒がれて顔が知れたほうがいいし」

 日野くんは笑って話すけれど、ひやひやしてしまう。後ろを振り返ると、こちらについてこようとしないまでも人々の視線は彼に集中している。

「それに俺の知り合いとか、彼女いるの公表してるしね。知らない? 常浦って歌手。湖月と騒がれてたでしょ」