「あの、ひ、人が見てるよ」

「そう? 気のせいじゃない?」

 気のせいじゃない。断じて気のせいじゃない。明らかに周りの人の視線が、「どこかで見たことある人」を思い出す目だった。それにちらちらと「あの人さあ?」という声も聞こえる。写真を撮られたりしたら、一緒に居るのが私みたいなどこにでもいる凡人でも、彼に多大な迷惑をかけてしまうだろう。

「ばれてるよ。い、いくら私みたいなのでも、人と歩いてるのとか撮られたら、日野くんの仕事に影響が」

「無いよ。むしろ話題性利用するような場所選んだんだから。行こ?」