「なーにしよっかなあー」

 学校帰りスピーカーから流れる軽快なメロディに耳を澄ませながら歩きなれた商店街を進んでいくと、お肉屋さんから漂う揚げたてのコロッケが、漬物屋さんからは少しつんとした糠が香る。

 出来立ての食べ物の匂いを嗅ぐたび商店街に来たという実感が湧いた。並んでいる商品に足を止めたり、また目的を思い出して進むことを繰り返していくと、通りの隙間から桃色の花びらが流れてくる。

 商店街の裏手にある桜並木の花びらが風にのって飛んできたらしい。

 手のひらを広げてみると、爽やかな風を含むように舞った桜は手のひらにすとんと収まる。周りでは商品に花弁が落ちたりしないよう慌てて庇ったりシートを被せなおしていた。