中には知り合いの喫茶店から賞味期限の近いケーキを貰ったから仕入れは0円とか、その日限り、その場限りの費用もあって一応予算は組めたものの、相当切り詰めないと厳しい。

 流石にアリスカフェで制服での接客というのは世界観を壊してしまうし、食べ物が一種類の喫茶店もよくないから削るとしたら内装費だけど、そこもそこで削ってしまえば世界観に響くし……。

 なんて、問題はまだまだ山積みだけれど、新たな問題が出てきてしまった。

「沖田くん、今日も休み……?」

 朝、いつもどおり登校してくると、沖田くんの姿が無かった。不思議の国のアリスモチーフの喫茶店にしようと決めてからというもの、沖田くんは休み続けている。クラスの男子が連絡しているらしいけれど、メッセージに既読がつかないらしい。電話にも出ないけれど、一応学校には連絡しているらしく、先生たちは沖田くんの欠席について知っているようだった。

 となると、欠席理由はお兄さん、ということになる。だいたい逮捕されてから一週間くらいだけど、沖田くんも捜査に協力したりしているのだろうか……。

「ほら、真木くん学校着いたよ。椅子に座ったら寝ていいから。ね?」

「ねむ。ねむむ」

 一度沖田くんについて、先生に聞いたほうが良いだろう。私は真木くんを椅子に座らせつつ、教室を後にする。だいちゃん先生は、美術室か、美術準備室……もしくは職員室にいるだろう。教室から一番近いのは職員室だ。

「失礼します……二年七組の園村です」

 早速職員室に向かって名前を名乗り、だいちゃん先生がいないか尋ねると、非常勤の先生が呼びに行ってくれた。職員室は教室三個分くらいの大きさだけど、出入り口は一つしか無く、生徒は中まで勝手に入っちゃいけない決まりだから、出入り口近くの先生に呼びに行ってもらうことが多い。職員室内では所々ミーティングや打ち合わせが行われていて、「猟奇殺人について、生徒の放課後の寄り道について注意するように」と、不審者情報などのプリントが貼られたホワイトボードが置かれている。

やがて非常勤の先生が戻ってきて「今席を外してるみたいだ。多分美術室か美術準備室にいるんじゃないかな」