2回目の出会えた奇跡というものは

「だから、皆さんには炭の様になって欲しいのです。」
「炭?」
「そうです。修学旅行という大きな行事が終わった後、必ず人は気が緩んでしまいます。つい、あぁやっと終わったから少し休みたいなというふうに。良いんです休んでも。大事なのはそこからです!炭は一見火はもうついていないと思っても、風が吹けばその影響でまた日が大きく燃え上がるのです。このように皆さんにも勢いが弱まっても燃え尽きてしまわない様にしてほしい!と、先生は思います。」
男子の誰かが小さく感嘆の声を漏らした。
これはすごい名言だと思った。というか名言に聞こえた。もう少しで卒業なのだから、最後まで踏ん張って欲しいのだろう。
これと同じような意味合いの名言を、少し前にも聞いた気がする。
その時は確か竹の節、だった。竹がなぜあんなにも丈夫に立っているかというと、節目がちゃんとしているからである、と。だからこの節目を大切にして踏ん張っていれば次も乗り越えていける、らしい。
みんなは納得している様だったが私にはいまいち、なにを次に乗り越えなければいけないのかが分からなかったけれど。
それでクラスの雰囲気がよくなって行くなら一番良いだろう。もしかしたら、この六の一は私が思う以上にとても団結力と勢いのあるクラスなのかもしれない。


私がまだ一年生か二年生かの頃、学校が嫌いだった。最初は可愛い赤色のランドセルを買ってもらって楽しみにしていたのに。私が仲間に入っていた友達の六人グループで軽いいじめが始まったのだ。いじめと言っても仲間外れをされたり、遊びで命令されたり、という感じだった。でもそれが続いて行くうちに私は違和感と苛立ちを覚え始めた。
そもそもいじめの被害者は私だけではなくて、六人のうちの一人が他の五人を順番に仲間外れにするというもので、なぜ五人の仲間がいたのにも関わらずその子に反抗できなかったのかと今なら冷静になって考えられる。しかし当時はそんなことすら考えなかった。他の友達は消しゴムや鉛筆をいくつも盗られていたし、また他の友達は完全に言いなりになるしかないくらい「支配」されていた。
その子の支配力というか、勢いはすごかったから勝てるとは思わなかったのだろう。幼いわりに理解していたつもりだ。
その後先生の手を借りて、なんとか今に至る。解決したと思っていたのにそれは上部だけだったようだ。今ようやくスッキリした。

その時の加害者だった蘭々ちゃんも今は仲良くしてくれているのだからさ。