プロローグ


 多くの国を巻き込んだ世界大戦が起き、その戦争は各国に甚大な被害と悲しみを生み出した。

 それは日本も例外ではなく、大きな被害を受けた。

 復興には多大な時間と労力が必要とされると誰もが絶望の中にいながらも、ようやく終わった戦争に安堵もしていた。

 けれど、変わってしまった町の惨状を見ては悲しみに暮れる。
 そんな日本を救ったのが、それまで人に紛れ陰の中で生きてきたあやかしたち。


 陰から陽の下へ出てきた彼らは、人間を魅了する美しい容姿と、人間ならざる能力を持って、戦後の日本の復興に大きな力となった。
 そして現代、あやかしたちは政治、経済、芸能と、ありとあらゆる分野でその能力を発揮してその地位を確立した。

 そんなあやかしたちは時に人間の中から花嫁を選ぶ。

 見目麗しく地位も高い彼らに選ばれるのは、人間たちにとっても、とても栄誉なことだった。
 あやかしにとっても花嫁は唯一無二の存在。
 本能がその者を選ぶ。

 そんな花嫁は真綿で包むように、それはそれは大事に愛されることから、人間の女性が一度はなりたいと夢を見る。


 けれど、花嫁となった女性は幸せなのだろうか?

 最初の花嫁はその運命に翻弄され、最後は若くして命を落とした。
 その亡骸は桜の木の下に埋められた。

 愛した人と我が子を残して逝かなければならなかった最初の花嫁は幸せだったのだろか。

 恨みはなかったのだろうか?

 それは今となっては誰も知ることはできない、本人だけが知ることだ。