老人ホームから帰る頃、地元に戻ると秋の短い日はとっぷり更けていて、街には白やオレンジの外灯が灯る。中にはかなり気の早い、クリスマスの飾りもあった。
シンバに会えない三年間、いろいろなことがあった。いちばん仲の良かった茉奈とは二年生の時、文理選択でクラスが分かれてしまったけれど、それでも気が合うから、東京の医学部のある大学で学んでいる茉奈とは今でも時々ラインすることがある。
里美と鈴子は、二年生になって別々のクラスになってから、廊下で鉢合わせしても立ち話すらしなくなった。風の噂で、高校卒業後は地元の短大だか専門学校だかに二人とも進んだらしいけれど、たまに駅やショッピングモールで見かけると、露出の多い服を着て隣に男の子を連れている。
好みも価値観もまったく合わない相手と、なんで無理をして友だちをやっていたんだろう。なんとなく四人でいつも一緒にいた高校一年生のあの頃の息苦しさを思い出しては、自分は子どもだったのだな、と思う。
地元の駅で降りて、家の方角に向かって歩き出す。この時間だから、お勤め帰りのサラリーマンや、制服姿の高校生、わたしと同い年くらいの大学生くらいの人も多い。
その中に、シンバを見つけた。
外国人みたいな、彫りの深い顔立ち。三年の間にぐっと背が高くなっている。
「シンバ!!」
反射的に呼びかけると、その人はびっくりしてこちらを見た。わたしの顔に焦点を合わせ、目を丸くしている。
そして、悟る。この人はシンバじゃないって。
わたしを見る目が、驚いている。シンバはいくら三年経ったって、わたしの顔を忘れたりなんかしないんだから。
「君、誰……?」
上ずった顔で言うその人に向かって、首を横に振る。
「すみません。人違いでした」
ロングスカートの裾を風にはためかせながら家路に向かって、ずっと涙が止まらなかった。
シンバ、いつになったら会えるの? わたしの前に現れてくれるの?
シンバがいなくても、シンバがいないからこそ、わたし、この三年間ずっと頑張ってきた。
だからそろそろ、わたしの前に出てきてよ。
何泣いてんだよ、花音、って笑ってよ。
シンバのいない人生なんて、つまらないよ……。
シンバに会えない三年間、いろいろなことがあった。いちばん仲の良かった茉奈とは二年生の時、文理選択でクラスが分かれてしまったけれど、それでも気が合うから、東京の医学部のある大学で学んでいる茉奈とは今でも時々ラインすることがある。
里美と鈴子は、二年生になって別々のクラスになってから、廊下で鉢合わせしても立ち話すらしなくなった。風の噂で、高校卒業後は地元の短大だか専門学校だかに二人とも進んだらしいけれど、たまに駅やショッピングモールで見かけると、露出の多い服を着て隣に男の子を連れている。
好みも価値観もまったく合わない相手と、なんで無理をして友だちをやっていたんだろう。なんとなく四人でいつも一緒にいた高校一年生のあの頃の息苦しさを思い出しては、自分は子どもだったのだな、と思う。
地元の駅で降りて、家の方角に向かって歩き出す。この時間だから、お勤め帰りのサラリーマンや、制服姿の高校生、わたしと同い年くらいの大学生くらいの人も多い。
その中に、シンバを見つけた。
外国人みたいな、彫りの深い顔立ち。三年の間にぐっと背が高くなっている。
「シンバ!!」
反射的に呼びかけると、その人はびっくりしてこちらを見た。わたしの顔に焦点を合わせ、目を丸くしている。
そして、悟る。この人はシンバじゃないって。
わたしを見る目が、驚いている。シンバはいくら三年経ったって、わたしの顔を忘れたりなんかしないんだから。
「君、誰……?」
上ずった顔で言うその人に向かって、首を横に振る。
「すみません。人違いでした」
ロングスカートの裾を風にはためかせながら家路に向かって、ずっと涙が止まらなかった。
シンバ、いつになったら会えるの? わたしの前に現れてくれるの?
シンバがいなくても、シンバがいないからこそ、わたし、この三年間ずっと頑張ってきた。
だからそろそろ、わたしの前に出てきてよ。
何泣いてんだよ、花音、って笑ってよ。
シンバのいない人生なんて、つまらないよ……。



