S駅は学校から歩いて十分、可愛い洋服屋さんやカラオケ屋さん、ゲームセンターもある、高校生が放課後に遊び歩くにはぴったりの場所だ。駅の東側と西側でちょっとカラーが違って、西側に行くとパチンコ屋さんや居酒屋さん、大人のお店があったりもするけれど。
敦彦くんは、時間ぴったりに東口のバスターミナルのベンチのところで待っていた。わたしを見てにっこりと微笑む。
「ごめん。待たせちゃった?」
「ううん、全然。今日、花音ちゃんに会えるの楽しみ過ぎて、授業が全然頭に入ってこなかったよ」
こそばゆいような甘い台詞に思わず口角がほぐれてしまう。シンバが今のわたしを見たら、お前ってほんと単純だな、って怒りそう。
「お腹減ってる?」
「少し」
「じゃあ、クレープ食べよっか。そこのクレープ屋さんで、期間限定マロンクレープっていうのがやってるんだよ。さつまいももある」
「わたし、どっちも好き!」
「じゃあ、二人でひとつずつ頼んで、仲良くシェアしようか」
女子中高生ばっかりのクレープ屋さんの列に二人で並び、こぢんまりとした店内でマロンクレープとさつまいもクレープを分け合って食べた。男の子とこんなことをするのは初めてで、ちょっと胸が高鳴る。
わたしは、敦彦くんを好きになりかけていることを否定できない。
「この後、どうする?」
百円のホットコーヒーを飲みながら敦彦くんが訊いてきた。この前はご飯、何が食べたい? て言われて、なんでもいい、みたいな曖昧な答え方をしちゃったから、今日はちゃんと答えないと。優柔不断な子だと思われたくない。
「ゲームセンター、行きたいな。クレーンゲーム、やりたい」
「いいね。だったら、そこのゲーセンがいいよ。安いんだよ、クレーンゲームとか、他のゲームも」
コーヒーの紙コップとクレープの包み紙をゴミ箱に捨てた後、わたしたちはそのゲーセンに向かった。
放課後のゲーセンは、賑やかだ。小さな子どもを連れたお母さんや、制服姿の女子中高生が多い。なかには、わたしたちみたいな放課後デートのカップルも。同じ制服がいないか、ついついチェックしてしまう。
「何きょろきょろしてるの?」
「いや、別に……」
うーん、こんな時まで妙にそわそわしちゃうわたしって、自意識過剰なのかな? 敦彦くんと歩いてるところをクラスメイトに見つかって、次の日学校で噂になりたくない。変に目立ちたくない。人目ばっかり気にしちゃってる。
「ねぇ、これやらない? 可愛いでしょ? このぬいぐるみ」
「ほんとだ。これ、アザラシ? アシカ?」
「よくわからないけど、可愛いよね? 僕がとってあげる。こういうの、得意なんだ」
と、敦彦くんはスマートに自分のお財布からお金を取りだし、二百円を機械に入れた。一度目は上手くいかなくて、うわぁーっ、と小さく声を上げたけれど、二度目はアームにしっかりぬいぐるみが捕えられて、ごとんと大袈裟な音を立てた。
「はいこれ、花音ちゃんに。僕からのプレゼント」
「え、いいの? 敦彦くんのお金で取ったのに」
「いいのいいの。たった四百円だもん。気にしないで、貰ってほしいな」
まばゆいばかりの敦彦くんの笑顔に、胸がこそばゆくなる。
わたしは、この人が好きなんだろうか? それとも、男の子とデートしてるっていうこの状況にドキドキしているだけ?
自分の気持ちが、わからない。
その後、二人でリズムゲームやシューティングゲーム、レーシングゲームなど、高校生が楽しめるゲームをひととおりやった。遊び疲れた後は、二階の自販機前のベンチで休憩。敦彦くんはコーラ、わたしはオレンジジュース。
「せっかくだから、プリクラ撮らない?」
敦彦くんが言った。
「花音ちゃんの写真、欲しいんだよね」
「え」
つい、声が固まる。互いの写真を持ってるって、それはもう、恋人同士ってことなんじゃ……。
敦彦くんは、時間ぴったりに東口のバスターミナルのベンチのところで待っていた。わたしを見てにっこりと微笑む。
「ごめん。待たせちゃった?」
「ううん、全然。今日、花音ちゃんに会えるの楽しみ過ぎて、授業が全然頭に入ってこなかったよ」
こそばゆいような甘い台詞に思わず口角がほぐれてしまう。シンバが今のわたしを見たら、お前ってほんと単純だな、って怒りそう。
「お腹減ってる?」
「少し」
「じゃあ、クレープ食べよっか。そこのクレープ屋さんで、期間限定マロンクレープっていうのがやってるんだよ。さつまいももある」
「わたし、どっちも好き!」
「じゃあ、二人でひとつずつ頼んで、仲良くシェアしようか」
女子中高生ばっかりのクレープ屋さんの列に二人で並び、こぢんまりとした店内でマロンクレープとさつまいもクレープを分け合って食べた。男の子とこんなことをするのは初めてで、ちょっと胸が高鳴る。
わたしは、敦彦くんを好きになりかけていることを否定できない。
「この後、どうする?」
百円のホットコーヒーを飲みながら敦彦くんが訊いてきた。この前はご飯、何が食べたい? て言われて、なんでもいい、みたいな曖昧な答え方をしちゃったから、今日はちゃんと答えないと。優柔不断な子だと思われたくない。
「ゲームセンター、行きたいな。クレーンゲーム、やりたい」
「いいね。だったら、そこのゲーセンがいいよ。安いんだよ、クレーンゲームとか、他のゲームも」
コーヒーの紙コップとクレープの包み紙をゴミ箱に捨てた後、わたしたちはそのゲーセンに向かった。
放課後のゲーセンは、賑やかだ。小さな子どもを連れたお母さんや、制服姿の女子中高生が多い。なかには、わたしたちみたいな放課後デートのカップルも。同じ制服がいないか、ついついチェックしてしまう。
「何きょろきょろしてるの?」
「いや、別に……」
うーん、こんな時まで妙にそわそわしちゃうわたしって、自意識過剰なのかな? 敦彦くんと歩いてるところをクラスメイトに見つかって、次の日学校で噂になりたくない。変に目立ちたくない。人目ばっかり気にしちゃってる。
「ねぇ、これやらない? 可愛いでしょ? このぬいぐるみ」
「ほんとだ。これ、アザラシ? アシカ?」
「よくわからないけど、可愛いよね? 僕がとってあげる。こういうの、得意なんだ」
と、敦彦くんはスマートに自分のお財布からお金を取りだし、二百円を機械に入れた。一度目は上手くいかなくて、うわぁーっ、と小さく声を上げたけれど、二度目はアームにしっかりぬいぐるみが捕えられて、ごとんと大袈裟な音を立てた。
「はいこれ、花音ちゃんに。僕からのプレゼント」
「え、いいの? 敦彦くんのお金で取ったのに」
「いいのいいの。たった四百円だもん。気にしないで、貰ってほしいな」
まばゆいばかりの敦彦くんの笑顔に、胸がこそばゆくなる。
わたしは、この人が好きなんだろうか? それとも、男の子とデートしてるっていうこの状況にドキドキしているだけ?
自分の気持ちが、わからない。
その後、二人でリズムゲームやシューティングゲーム、レーシングゲームなど、高校生が楽しめるゲームをひととおりやった。遊び疲れた後は、二階の自販機前のベンチで休憩。敦彦くんはコーラ、わたしはオレンジジュース。
「せっかくだから、プリクラ撮らない?」
敦彦くんが言った。
「花音ちゃんの写真、欲しいんだよね」
「え」
つい、声が固まる。互いの写真を持ってるって、それはもう、恋人同士ってことなんじゃ……。



