第九章 小人のジェラシー
早く寝なきゃいけないっていうのに、いつまでも明日の服が決まらなくて落ち着かない。腰のところにリボンがついたピンクのワンピースじゃ、いかにも気合入り過ぎ? 大人っぽく、黒でまとめたほうがいいのかなぁ。グレーのトレーナーじゃあまりにもカジュアル過ぎる。デートって、どんな服を着て行けばいいものなの?
「ずいぶん楽しそうだな」
クローゼットの中身を引っ張り出し、姿見の前で睨めっこしていると、シンバが屋根裏から降りてきてちょこんと机の上に座った。なんとなく、憮然とした表情。
「ねぇ、シンバの意見も聞かせて! こういうのって、男の子のアドバイスも頼りになると思うの。このワンピース似合わないかなぁ? ボトムスは、やっぱりパンツよりスカートのほうがいいよね?」
「ふん、そんなのどれだっていいんじゃねぇか」
「何よ、適当なこと言って!」
「お前こそ、浮かれすぎなんだよ! そいつのこと、別に好きでもなんでもねぇくせに!」
シンバは明らかに不機嫌だ。やっぱりシンバ、ヤキモチ妬いているんだろうか? わたしと他の男の子がデートするのが、そんなに嫌?
「敦彦くんのこと好きとか……そういうの、まだわからないよ。でもいいじゃない、デートっていっても、ただ一緒に映画観に行くだけだもん。友だちとして」
「花音は流され過ぎなんだよ。高校生の男を舐めるなよな。隙あらば押し倒してくるぞ」
「敦彦くんはそんな人じゃない!」
「なんでそいつのこと庇うんだよ!」
シンバの顔が怒りなのか照れなのか赤くなってる。そんなシンバを見ると、またからかいたくなってきてしまう。
「シンバはそんなに、わたしが敦彦くんとデートするのが嫌なんだね?」
シンバがくっきりした眉をひそめた。
「だからそんな、意地悪言うんだ? ヤキモチ妬いてるんでしょ?」
「馬鹿! ヤキモチなんか妬いてねぇ!」
ぴょこん、と机から飛び降りると、シンバはその超小人的な運動神経でわたしの左ふくらはぎ辺りにキックをかましてきた。不意打ちの攻撃に思わずふらつく。
「いたっ! 何するのよ!」
「これはヤキモチなんかじゃねぇ! ただ、花音は俺にとって初めてできた友だちだから! 友だちのこと、心配してるだけだ!!」
「じゃあ、わたしと敦彦くんがキスしたらどう思う?」
そんなことあるわけないけど。
しばらく黙り込んだ後、シンバはくるん、と背を向けた。
「そんなの、別になんとも思わねぇし」
負け惜しみみたいな言い方だった。
早く寝なきゃいけないっていうのに、いつまでも明日の服が決まらなくて落ち着かない。腰のところにリボンがついたピンクのワンピースじゃ、いかにも気合入り過ぎ? 大人っぽく、黒でまとめたほうがいいのかなぁ。グレーのトレーナーじゃあまりにもカジュアル過ぎる。デートって、どんな服を着て行けばいいものなの?
「ずいぶん楽しそうだな」
クローゼットの中身を引っ張り出し、姿見の前で睨めっこしていると、シンバが屋根裏から降りてきてちょこんと机の上に座った。なんとなく、憮然とした表情。
「ねぇ、シンバの意見も聞かせて! こういうのって、男の子のアドバイスも頼りになると思うの。このワンピース似合わないかなぁ? ボトムスは、やっぱりパンツよりスカートのほうがいいよね?」
「ふん、そんなのどれだっていいんじゃねぇか」
「何よ、適当なこと言って!」
「お前こそ、浮かれすぎなんだよ! そいつのこと、別に好きでもなんでもねぇくせに!」
シンバは明らかに不機嫌だ。やっぱりシンバ、ヤキモチ妬いているんだろうか? わたしと他の男の子がデートするのが、そんなに嫌?
「敦彦くんのこと好きとか……そういうの、まだわからないよ。でもいいじゃない、デートっていっても、ただ一緒に映画観に行くだけだもん。友だちとして」
「花音は流され過ぎなんだよ。高校生の男を舐めるなよな。隙あらば押し倒してくるぞ」
「敦彦くんはそんな人じゃない!」
「なんでそいつのこと庇うんだよ!」
シンバの顔が怒りなのか照れなのか赤くなってる。そんなシンバを見ると、またからかいたくなってきてしまう。
「シンバはそんなに、わたしが敦彦くんとデートするのが嫌なんだね?」
シンバがくっきりした眉をひそめた。
「だからそんな、意地悪言うんだ? ヤキモチ妬いてるんでしょ?」
「馬鹿! ヤキモチなんか妬いてねぇ!」
ぴょこん、と机から飛び降りると、シンバはその超小人的な運動神経でわたしの左ふくらはぎ辺りにキックをかましてきた。不意打ちの攻撃に思わずふらつく。
「いたっ! 何するのよ!」
「これはヤキモチなんかじゃねぇ! ただ、花音は俺にとって初めてできた友だちだから! 友だちのこと、心配してるだけだ!!」
「じゃあ、わたしと敦彦くんがキスしたらどう思う?」
そんなことあるわけないけど。
しばらく黙り込んだ後、シンバはくるん、と背を向けた。
「そんなの、別になんとも思わねぇし」
負け惜しみみたいな言い方だった。



