「あのね、私の未練は“もう一度涼花と会って仲直りをする”だったの。…私ね、あの悪霊に取り込まれてなくても、きっと涼花には会いに行けなかったと思う。怖かったから。涼花に拒絶されたらと思うと、怖くて一歩が踏み出せなかった」


「…私だってそうだよ」



有紗との思い出がいつの間にか全部苦しいものに変わっていて、思い出さないように必死に蓋をしていた。


お葬式はもちろん、お線香すらずっと上げに行けなかった。



「ずっと逃げてた。有紗と向き合うことが怖くて。もう、傷つきたくなくて…」



有紗は体を離すと、にっと昔みたいに明るく笑った。



「だけど、会いに来てくれたでしょ?私を助けてくれた」


「それは…」


「理由はなんにしても、私は嬉しかったよ。涼花が迷わず私の名前を呼んでくれて、こうしてまた話すことができているから。私のこと見捨てないでくれて、覚えててくれてありがとう」



違うよ有紗。ありがとうって伝えても伝えきれないのは私の方だよ…。