「…帰らないと」



私が中二の秋頃に引っ越したから、ここに来るのも一年半ぶりだ。


大好きで思い出がたくさん詰まっているからこそ、もう二度と来たくない街。来てはいけない街…。



–––––「…何言ってるの、涼花?」



「…っ」



記憶がフラッシュバックし、息ができない。苦しい。


急いで反対側の電車に乗って帰ろうとするも、改札を通ろうとするとブザーが鳴り残高がないことを知らせてきた。



「…嘘、でしょ…っ」



お財布の中身は五十三円しか入っていなくて、鞄をひっくり返してみるもののお金が出てくるわけがなかった。



「はぁ…はぁ…っ」