サラサラの腰まである黒髪は風がどんなに吹いても、ピクリとも動かない。



「えっと…私、鈴宮涼花って言います」


「私は松下(まつした)華澄。今年、この高校に通うはず…だったの」



自分が着ている制服を寂しそうに見つめたあと、華澄さんはニッコリと微笑んだ。



「高峰くんから聞いたんですけど…どうして未練解消をしたくないんですか?悪霊になっちゃうんですよ?」



遠くでチャイムが鳴っているのが聞こえた。


チャイムが鳴り終わってから、華澄さんがゆっくりと桜の木を見上げた。



「ええ、知っているわ。…それでも、嫌なの。やりたくないの。ごめんね」


「どうして…。華澄さんの未練ってなんなんですか…?」


「…内緒。教えてもいいことなんてないもの」



はあ…、と隣で高峰くんがため息をついた。