もう少し遅ければ、晴香は…。


呆然と座り込んでいると、高峰くんはポケットから何かの文字が書かれている紙切れを取り出し、ブツブツと呟き出した。



「この世から消え去れ!」



最後にはっきりとそう呟くと同時に、すっかり忘れていた黒い影に向かって紙切れを投げ入れた。


紙切れはピカッと一瞬光ったかと思うと、それに反応するように黒い影がぶわぁと膨れ上がった。



–––––ぎゃあああああ!!



黒板を引っ掻くような、ものすごい悲鳴に思わず耳を塞ぐ。


黒い影は、はらりと崩れたかと思うと、次々と消えていった。



「これでよし」



高峰くんはクルリと振り向くと、何も見えていなかったのか、きょとんとしている晴香の頭に手を乗せた。