「んー、なんでって言うか……」

 川名が首に手をあてながら、目線を下げる。

「三芳はなんか、俺の目を惹くんだよね。昔っから」
「え?」

 少し照れくさそうに呟いた川名の言葉を、どう解釈すればいいのかわからなくて困った。

 目を惹くって、どういう意味で? 昔からの顔見知りだから────?

 ぽかんとしていると、視線を上げた川名が慌てたように手に下げた購買のビニール袋の中をガサゴソと探った。

「ごめん、微妙な空気にして。お詫びにこれやるよ」

 川名が私に差し出してきたのは、ハムと卵のサンドイッチだった。

「さっき定食ダメになっちゃったから。腹減ってない?」
「でも、これ……」
「あ、その具材好きじゃなかったっけ?」
「好き、だけど……これ、川名の昼ごはんでしょ?」
「へーき、へーき! 俺、他にも食うものあるし」

 川名がそう言って、強引にサンドイッチを押し付けてくる。

「ありがとう……」

 戸惑い気味に受け取ると、川名がくしゃりと表情を崩すようにして笑った。

「じゃぁ、俺、人待たせてるから行くな」

 川名が私に手を振って、そそくさと学食の外へと駆けて行く。
 早足で去って行く川名の背中を見送りながら、私は少し温かい気持ちになっていた。