「ねえ由美、サイコパス診断って知ってる?」
休み時間、由美は自分の席でのんびりしていると、クラスメイトの彩が聞いてきた。
「ううん。サイコパスっていう言葉は少し聞いたことあるけど。」
サイコパス、確か感性が普通の人とは違っていて、たとえ犯罪を犯しても何も感じない人だっただろうか。それくらいの認識しか私にはなかった。
「なんかサイコパスかどうかを診断出来るものなんだって。」
「そのまんまだね。」
「ネットにあったからやってみようよ!」
彩は興味津々そうに言う。
「まあいいけど。」
「真衣もやらない?」
彩が私の隣の席に座っている真衣に聞いた。
「ううん、私はいいよ。ありがとう。」
真衣はおとなしめの子であり、こういうのはあまりやらなそうなタイプだったから、予想通りの返答だった。
私と彩はサイコパス診断を始めた。
彩が質問を読み上げる。
「え〜っと、あなたはよく当たると評判の占い師に見てもらったところ、占い師から『あなたに危害をもたらす存在が身近にいるから気をつけるように』と警告をされました。その後、あなたは占い師を殺してしまいましたが、どのような理由でしょうか?だって。」
いきなり占い師を殺すなんてそれだけでサイコパスな気もするが、とりあえず私と彩は考えてみることにした。
「占い師を殺した理由か、…ダメだ全然分からない。『危害をもたらす存在が身近にいる』っていう占い師の警告に気が動転しちゃったからとかかな。」
私はなんとか答えを出した。
「そうだ!占い師自身が自分の命を狙っていると勘違いしたからじゃない?」
彩が自身ありげに答える。
「あ〜なんかサイコパスっぽい。」
「でしょ!」
彩が嬉しそうに言った。
彩が答えを読み上げる。
「サイコパスの答えは、『占い師が自分の死を予言できるのか試してみたかったから』、だって。」
「え〜。占いの内容関係ないじゃん。」
「だね。」
彩は少し残念そうだった。
私はそんな彩に聞いてみた。
「彩ってサイコパスになりたいの?」
彩はギクっとした。
「だ、だってなんかかっこいいじゃん、サイコパスっていう響きが。」
「分からなくもないけど。」
私は苦笑しながら言った。
「それにしても、試してみたかったから殺すってだいぶやばい奴じゃない?」
「まあ、サイコパスってそういう人たちなんでしょ。」
「そっか。…一応もう一個やってみる?」
「もう一回?…じゃあ、せっかくだし。」
もう私たちがサイコパスじゃないことは十分わかったような気もしたが、他にやることもないのでやってみることにした。
「次の質問は、あなたは親戚の葬式に妹と出席した。そこにいた黒い髪で黒い服を着た黒い靴の男にあなたは魅力を感じた。
その男はあなたの妹の理想の男だったその夜にあなたは妹を殺した。殺した動機は?」
「サイコパスって、すぐ殺すね。」
「だね。」
「妹を殺した理由、実は私も女で、その男の人は妹にとって理想の人だったけど、私にとっても理想の人だったから妹に取られたくなかったから、とか。」
「あ、それあるかも!」
この答えには私もサイコパスと同じ考えじゃないだろうかという謎の自身があった。
「私は、その黒い服と靴の男がなぜか死神に見えて、妹を殺せばあの世で合わせてあげられると思ったから、かな。」
「え〜なにそれ。」
「だってわかんないんだもん。」
彩はギブアップといった様子だった。
「それじゃ答えは、『妹を殺せばその男と葬式でまた会えると思ったから』。」
「だいぶいっちゃってるね。」
「サイコパスだからね。」
全然違った。やはり予想の斜め上をいくような答えだ。
「やっぱり私たちじゃサイコパスの気持ちは理解できないね。」
「それな。」
休み時間の終わりのチャイムが鳴ったので、彩は自分の席に戻った。
サイコパス診断は、やはりサイコパスは私たちとは違うんだな、と感じるものだった。
由美と彩がサイコパス診断をしている時、由美の隣の席でこっそり聞いていた真衣の頭の中には疑問が浮かんでいた。
え、私が思いついた答えってサイコパスの答えなの?
…そっか。
真衣はニヤリと笑った。
サイコパスは意外と身近なところにいるのかもしれない。