家には愛する彼氏がいます。
先月から私は、彼との憧れの同居生活を始めました。
彼はとても優しくて、いつも私のことを見てくれています。
私はそんな彼のことが大好きで、何時間、いや何日も彼のことを見ていてもいっこうに飽きることなんてありません。
私たちが同居することになったキッカケは、恥ずかしながら、些細なケンカが原因でした。
ある日、私と彼が街中でデートをしていると、彼が他の女を見ていたのです。
彼はただその女を見ていただけで、それ以上のことは何もないということは私にも分かっていたのですが、その時私はとても不快な気持ちになりました。
どうして私だけを見てくれないの、どうして他の女なんか見るの。
私は彼に他の女を見ないよう言いました。
彼は他の女なんか見ていないと言いましたが、私にはそれが信じられませんでした。
私の中では、なんとも言えない黒いモヤモヤが渦巻いていました。
どうしたらこのモヤモヤは消えるのだろうか。
しばらく悩んだ後、私はとても素晴らしい考えを思い付きました。
彼が私とずっと家の中で暮らしていたら、きっと彼は私のことだけを見続けてくれる。
もちろん、何も食べないでいては死んでしまうので、私がアルバイトをしてお金を集めて、私がスーパーに食べ物を買いに行きます。
彼はただそこにいてくれるだけでいい。
私はすぐさまこの素晴らしい考えを彼に伝えました。
彼は私の考えを聞いた時、とても驚いた顔をしていました。
それはきっと、どうしたらそんな良い考えが思いつくのだろうかと思ったからでしょう。
その後私は彼との同居の準備を整えるために、家を借り、家具を運び込みました。
後は彼を呼びに行くだけでした。
私が彼に同居の準備ができたことを伝えると、彼はまたしてもとても驚いた顔をしました。
それはきっと、私のあまりの手際の良さに感心していたからでしょう。
そして、私は彼を新しい家に連れていくために、彼の手を取ろうとしました。
しかし、彼はなんと私の手を振り払ったのです。
今度は私が驚いた顔をしていました。
そんな私に彼は言いました。
「なにもいきなり同居しなくてもいいんじゃないかな?」
いいえ、それではダメなのです。
ずっと一緒にいなかったら、彼はきっと、また他の女を見るでしょう。
たとえそれが無意識なのだとしても、私にはそれが耐えられないのです。
だから、今すぐに同居したい、いやしなければならないのです。
私は彼にそう伝えました。
けれども、彼は尚、私と同居することを嫌がりました。
私は、そんな彼の同居することへの文句を話し続ける彼の口が憎らしくなりました。
いつもは私の事を褒めてくれて、私と楽しいお話をしてくれるその口が、この時ばかりはどうしようもないほど憎くなりました。
だから私は、彼を黙らせることにしました。
しばらくして彼の口は二度と開かなくなりましたが、それと同時に彼の体も二度と動くことはなくなりました。
彼ともう喋れなくないのは、とても悲しいことでした。
でも、ああ、やはり私は彼の全てが愛おしい。
その時流れていた赤い液体までもが私には愛おしかった。
私にはそれが彼の中から顔を出した、私と彼の『赤い糸』にすら思えてきたのです。
けれども、いつまでもその赤い糸に見惚れているわけにもいきません。
私は急いで彼を新しい家に運び込みました。
早速、私たち2人の同居を祝して買ってあったケーキでも食べようかと思いましたが、まずは一緒にお風呂に入ることにしました。
彼の体はすっかり冷え切ってしまっていたからです。
そしてその後、温まった彼と私はケーキを食べました。
彼は優しいので、私に自分の分のケーキも食べさせてくれました。
こうして、念願の同居生活がスタートしたのです。
同居してから1ヶ月たった今でも、私たちは仲良く暮らしています。
彼は1ヶ月前よりもだいぶグデンとしています。
きっとこの家に慣れてきたからでしょう。
彼の体臭のほうはやや気になりますが、それすらも私には愛おしいのです。
この夢のような同居生活を、私はとても満喫しています。