光 │ 光 │ 光 │ 光
光 光 光
青く輝く駅のファサード一面に
光の一粒一粒の 小さい光が
静援というエールになって
降り注ぐ星空の
イルミネーションの
下で、
ウキウキとした顔に
タレた目をさらに
ニコやかに下げ
白のロングコートを羽織った男。
旅するギャラリー『武々1B』の
オーナー 、
武久 一 (たけひさ はじめ)は、
隣にマネキンらしきモノの
腰を抱いて、
切子ステンドグラスのような
大きく空へ咲く青い氷花の
モニュメント イルミの前で
ギャラリースタッフのヨミに
電話を渡して写真を
撮らせている。
「どうどうぅ~?いい感じにぃ
カップルみたいに撮れたかな~」
ヨミの後ろには、
50本もの青い光の樹でつくる
光の森が並んで美しい。
「はい撮れましたよ、
ハジメオーナー。車の待ち時間
に、一体何を撮らせるんです?」
ヨミは、1度撮った写真を
確認して、
「また、白いコートなんかが
良く似合う事ですね。」と、
不満そうにした。
年末間近の九州。
そのメインステーションには
例年のごとくクリスマスから
パンテオン調に白く輝く
光の柱や
西洋のウインターマーケットが
店拡げる。
その光景は風物詩で、
ファンタスティックな 光の街に
迷いこんだよう。
その中でも 一際目立つ存在は
今、間違いなく
等身大の少女人形とポーズを
とっている ハジメだと、
ヨミは ため息をつく。
混雑を避けて、
イルミネーション前で、写真を
撮り終われば、誰もが
すぐに イルミネーションの前から
移動をして、間隔を開ける。
にも関わらず、
人形とツーショットをして
佇むハジメに、
声こそかけないが
誰もが
興味津々の視線を向けている。
「Alone な メンズにぃ個人年賀状
代わりで~、送信するだよん。」
とうとう、ボクにも彼女が
出来ましたん~てねん~と、
笑いながら、ハジメは
ポチポチっとと
電話を使って一斉送信を
してしまった。
「ハジメオーナー、本当に
おひとりで大丈夫ですか?
ご自分の車でもないですし。」
クールビューティーな
イメージを 与える容姿とは
裏腹に、ハジメに
保護者のような眼差しでもって
こだわりの、眼鏡のツルを
片手で上げながら
ヨミがハジメを心配する。
「あれっ~?ヨミくん、新しい
眼鏡?いつの間に 買ってたのん」
ハジメは
ヨミの顔に掛かる
透明クリアフレームに、
家のモチーフが細工された
パーツを指さす。
「この間、ヒルズに行った際に
新しいモデルが出てましたので
即買いしまして。初おろしです」
ハジメに気が付かれて
機嫌を良くしたヨミが、ニコヤカに答える。
「凄いねぇ、透明なフレームに
イルミネーションが映るとぉ、
ヨミくんの顔に 星空が載るんだ」
そんなヨミに
ハジメが
新しい発見をした事を伝えると
いつもはクールな
ヨミの顔がキョトンと
動揺に揺れてから、
「口から生まれた、お坊ちゃまは
コレだから 油断なりませんね。」
ジト+白い目で、ハジメを
細やかに睨んだ。
ウインターマーケットの店は
クリスマスまでは、
イベントに合う雑貨や
北欧由来のゲームの店が
たくさん出ていたが、
クリスマスを過ぎると、
ほとんど飲食店だけが残る。
ちょうど、ホットワインのブース
が、近いせいか
湯気が昇るカップを持つ人が
ハジメ達の前を 珍し気に人形を
見ては通り過ぎていく。
それを、残念そうに見る
ハジメを、運転があると
ヨミが小突く。
「でもさぁ、
いかにも今年らしいデザイン
だよねん。家とドアなんてさぁ」
ハジメはヨミの白い視線を
モノともせずに、
ヨミの左右にある眼鏡細工を
人差し指で ポンポンと
触って 口を弓なりにした。
ヨミは、それを無視して
ハジメに 車のキーを
渡す。
どこの世界に、ドでかい人形を
持った地味イケメンに、
眼鏡をなでられて、
喜ぶ人間がいるだろうか。
など心に思いながら
「こんな時でなければ、私も運転
をしながら、お供するところ
ですが仕方ありません。オーナー
くれぐれも お気をつけて。」
ヨミは ナビのセッティングも
チェーン装着も完了していると
ハジメに伝えた。
本来なら依頼主に
郵送で送られるアート商品を、
ハジメ自ら 届ける事になったのは
不運な出来事が重なった
からだ。
「100年に1度の大雪が降る
なんてさぁ、まさか思わない
よねぇ。頑張るよん。」
「本当に大丈夫なんでしょうか」
そんなやり取りをして、
ハジメとヨミはレンタカーを
停めている
駅4階駐車場に向かう。
もちろん、ハジメは
人形の腰を抱いての移動。
一見すると、
恋人同士で歩いている
ように見える光景だ。
新幹線乗り場から近い
野外の4階駐車は、
まだ雪が積もって 真っ白だった。
「先々週だっけぇ、東北で初雪が
記録的なドカ雪になったのって」
ハジメが 面白そうにヨミに
聞くのを、
「博多で雪が積もるのも 100年
ぶりでないかとニュースして
ましたね。トラックが転倒する
のも、仕方ないのですが。」
眉を潜めて、ヨミが答えた。
九州地方に100年に1度
あるかという大雪のせいで、
配送トラックが横転。
保険会社を含めて、アート商品の
破損見聞に博多まで
出向いたハジメとヨミは、
幸運にも 商品が無傷だった事を
運送ヤードで確認をした。
それでも、1度は開封した
厳重荷作りを解いてしまっては
再び元に戻す事は容易でなく、
「じゃあさ!ボクがぁ、直接
届けるよぉ。彼女と2人でさぁ、
ドライブすればいいんだから。」
思案したところでの
ハジメのツルの一声だった。
「ペーハに年末会うのも~、
なんだか面白いじゃない?
この間さぁ、リモートでぇ、
ペーハが居るとこが気になって
たんだよねん。ね?いい?」
商品の依頼主を 『ペーハ』と
呼びながら、ヨミに自らの
商品運送の了承を詰め寄る
オーナーに、
ヨミは呆れて その準備をしたのだ
アートドールの商品依頼主は
カメラマンの男性客。
今は大分で取材をしていて、
次の撮影も 大分だと聞いている。
ヨミは、
ハジメが博多の物流ヤードから
大分まで レンタカーで運ぶ事に
一抹の心配を覚えて、
つい強い語調で嗜めた。
「本当に無理はいけませんから」
ハジメは、そんなヨミに
いつもと同じく
手をヒラヒラとさせて
大丈夫だとポーズした。
用意された車は
北米から販売された
国内ブランドの高級車。
艶のある深い青色のクーペだが
スポーツモデルの為、
馬力も機能性もある車だ。
真っ白いロングコートのハジメが
車の前に立つと、なんとも
いかにも感がすると
思いつつ
ヨミは
ハジメの腕から、
商品のアートドールを受け取り
トランクではなく
車の助手席に乗せる。
フロントガラスから
見ると、まるで本当に
レディを乗せているかに
見えて複雑な表情をヨミは
見せた。
「ここからぁ、1時間40分ぐらい
かぁ。温泉も入れるんだよねん」
ハジメがナビの予想時間を見て、
ヨミから 行程のプリントアウトを
貰う。データの予備資料だ。
「宿にも連絡を入れています
から、もし途中で何かあれば
すぐに メッセージして
くださいよ!オーナー!」
ドアを締めるハジメに 煩く
ヨミが、言い付ける。
「はいは~い。ヨミくんはぁ、
だんだん 世の母親みたいにぃ
なるよねん。大丈夫大丈夫ぅ。」
これでもぉ、前職では ずっと車は
相棒だったんだよん。
夜のハイウェイは ウキウキするぅ
じゃあねん!と、タレた目で
ヨミに、いつものウインクを
投げて
ハジメは 雪が降る
夜のハイウェイへと、
ブルーのクーペに 白い息を
派手に吐かせて
愉しげに闇へ溶けた。
光 光 光
青く輝く駅のファサード一面に
光の一粒一粒の 小さい光が
静援というエールになって
降り注ぐ星空の
イルミネーションの
下で、
ウキウキとした顔に
タレた目をさらに
ニコやかに下げ
白のロングコートを羽織った男。
旅するギャラリー『武々1B』の
オーナー 、
武久 一 (たけひさ はじめ)は、
隣にマネキンらしきモノの
腰を抱いて、
切子ステンドグラスのような
大きく空へ咲く青い氷花の
モニュメント イルミの前で
ギャラリースタッフのヨミに
電話を渡して写真を
撮らせている。
「どうどうぅ~?いい感じにぃ
カップルみたいに撮れたかな~」
ヨミの後ろには、
50本もの青い光の樹でつくる
光の森が並んで美しい。
「はい撮れましたよ、
ハジメオーナー。車の待ち時間
に、一体何を撮らせるんです?」
ヨミは、1度撮った写真を
確認して、
「また、白いコートなんかが
良く似合う事ですね。」と、
不満そうにした。
年末間近の九州。
そのメインステーションには
例年のごとくクリスマスから
パンテオン調に白く輝く
光の柱や
西洋のウインターマーケットが
店拡げる。
その光景は風物詩で、
ファンタスティックな 光の街に
迷いこんだよう。
その中でも 一際目立つ存在は
今、間違いなく
等身大の少女人形とポーズを
とっている ハジメだと、
ヨミは ため息をつく。
混雑を避けて、
イルミネーション前で、写真を
撮り終われば、誰もが
すぐに イルミネーションの前から
移動をして、間隔を開ける。
にも関わらず、
人形とツーショットをして
佇むハジメに、
声こそかけないが
誰もが
興味津々の視線を向けている。
「Alone な メンズにぃ個人年賀状
代わりで~、送信するだよん。」
とうとう、ボクにも彼女が
出来ましたん~てねん~と、
笑いながら、ハジメは
ポチポチっとと
電話を使って一斉送信を
してしまった。
「ハジメオーナー、本当に
おひとりで大丈夫ですか?
ご自分の車でもないですし。」
クールビューティーな
イメージを 与える容姿とは
裏腹に、ハジメに
保護者のような眼差しでもって
こだわりの、眼鏡のツルを
片手で上げながら
ヨミがハジメを心配する。
「あれっ~?ヨミくん、新しい
眼鏡?いつの間に 買ってたのん」
ハジメは
ヨミの顔に掛かる
透明クリアフレームに、
家のモチーフが細工された
パーツを指さす。
「この間、ヒルズに行った際に
新しいモデルが出てましたので
即買いしまして。初おろしです」
ハジメに気が付かれて
機嫌を良くしたヨミが、ニコヤカに答える。
「凄いねぇ、透明なフレームに
イルミネーションが映るとぉ、
ヨミくんの顔に 星空が載るんだ」
そんなヨミに
ハジメが
新しい発見をした事を伝えると
いつもはクールな
ヨミの顔がキョトンと
動揺に揺れてから、
「口から生まれた、お坊ちゃまは
コレだから 油断なりませんね。」
ジト+白い目で、ハジメを
細やかに睨んだ。
ウインターマーケットの店は
クリスマスまでは、
イベントに合う雑貨や
北欧由来のゲームの店が
たくさん出ていたが、
クリスマスを過ぎると、
ほとんど飲食店だけが残る。
ちょうど、ホットワインのブース
が、近いせいか
湯気が昇るカップを持つ人が
ハジメ達の前を 珍し気に人形を
見ては通り過ぎていく。
それを、残念そうに見る
ハジメを、運転があると
ヨミが小突く。
「でもさぁ、
いかにも今年らしいデザイン
だよねん。家とドアなんてさぁ」
ハジメはヨミの白い視線を
モノともせずに、
ヨミの左右にある眼鏡細工を
人差し指で ポンポンと
触って 口を弓なりにした。
ヨミは、それを無視して
ハジメに 車のキーを
渡す。
どこの世界に、ドでかい人形を
持った地味イケメンに、
眼鏡をなでられて、
喜ぶ人間がいるだろうか。
など心に思いながら
「こんな時でなければ、私も運転
をしながら、お供するところ
ですが仕方ありません。オーナー
くれぐれも お気をつけて。」
ヨミは ナビのセッティングも
チェーン装着も完了していると
ハジメに伝えた。
本来なら依頼主に
郵送で送られるアート商品を、
ハジメ自ら 届ける事になったのは
不運な出来事が重なった
からだ。
「100年に1度の大雪が降る
なんてさぁ、まさか思わない
よねぇ。頑張るよん。」
「本当に大丈夫なんでしょうか」
そんなやり取りをして、
ハジメとヨミはレンタカーを
停めている
駅4階駐車場に向かう。
もちろん、ハジメは
人形の腰を抱いての移動。
一見すると、
恋人同士で歩いている
ように見える光景だ。
新幹線乗り場から近い
野外の4階駐車は、
まだ雪が積もって 真っ白だった。
「先々週だっけぇ、東北で初雪が
記録的なドカ雪になったのって」
ハジメが 面白そうにヨミに
聞くのを、
「博多で雪が積もるのも 100年
ぶりでないかとニュースして
ましたね。トラックが転倒する
のも、仕方ないのですが。」
眉を潜めて、ヨミが答えた。
九州地方に100年に1度
あるかという大雪のせいで、
配送トラックが横転。
保険会社を含めて、アート商品の
破損見聞に博多まで
出向いたハジメとヨミは、
幸運にも 商品が無傷だった事を
運送ヤードで確認をした。
それでも、1度は開封した
厳重荷作りを解いてしまっては
再び元に戻す事は容易でなく、
「じゃあさ!ボクがぁ、直接
届けるよぉ。彼女と2人でさぁ、
ドライブすればいいんだから。」
思案したところでの
ハジメのツルの一声だった。
「ペーハに年末会うのも~、
なんだか面白いじゃない?
この間さぁ、リモートでぇ、
ペーハが居るとこが気になって
たんだよねん。ね?いい?」
商品の依頼主を 『ペーハ』と
呼びながら、ヨミに自らの
商品運送の了承を詰め寄る
オーナーに、
ヨミは呆れて その準備をしたのだ
アートドールの商品依頼主は
カメラマンの男性客。
今は大分で取材をしていて、
次の撮影も 大分だと聞いている。
ヨミは、
ハジメが博多の物流ヤードから
大分まで レンタカーで運ぶ事に
一抹の心配を覚えて、
つい強い語調で嗜めた。
「本当に無理はいけませんから」
ハジメは、そんなヨミに
いつもと同じく
手をヒラヒラとさせて
大丈夫だとポーズした。
用意された車は
北米から販売された
国内ブランドの高級車。
艶のある深い青色のクーペだが
スポーツモデルの為、
馬力も機能性もある車だ。
真っ白いロングコートのハジメが
車の前に立つと、なんとも
いかにも感がすると
思いつつ
ヨミは
ハジメの腕から、
商品のアートドールを受け取り
トランクではなく
車の助手席に乗せる。
フロントガラスから
見ると、まるで本当に
レディを乗せているかに
見えて複雑な表情をヨミは
見せた。
「ここからぁ、1時間40分ぐらい
かぁ。温泉も入れるんだよねん」
ハジメがナビの予想時間を見て、
ヨミから 行程のプリントアウトを
貰う。データの予備資料だ。
「宿にも連絡を入れています
から、もし途中で何かあれば
すぐに メッセージして
くださいよ!オーナー!」
ドアを締めるハジメに 煩く
ヨミが、言い付ける。
「はいは~い。ヨミくんはぁ、
だんだん 世の母親みたいにぃ
なるよねん。大丈夫大丈夫ぅ。」
これでもぉ、前職では ずっと車は
相棒だったんだよん。
夜のハイウェイは ウキウキするぅ
じゃあねん!と、タレた目で
ヨミに、いつものウインクを
投げて
ハジメは 雪が降る
夜のハイウェイへと、
ブルーのクーペに 白い息を
派手に吐かせて
愉しげに闇へ溶けた。