「最初に言っただろ、その子の証言だけでは証拠能力なんかないですよって」

「だが、リリンは実際ケガをしていただろ?」

「自作自演って誰にでもできるんだよ、殿下。君は真面目だから思いつかないのかもしれないけど」


 なるほど、まじめも高じるとああなるのか。良かった私はまあまあ不真面目で。

 どちらかと言えばジーク様のが真面目だけどあの人はそれなりに黒い貴族に揉まれて生きてきているから王太子より汚い考え方を理解しているはずだ。

 反面教師にしようとしてはいるから心配はしてないけど。


「リリン・レーベル。君がどんなふうに殿下をそそのかしたかは知らないけど、裏では話がついているんだよ。今日大人の入場が遅かった理由もそれだ」

「え、えっ、なに、どうして……!? だってみんなだって……!」

「衛兵! この者を拘束しろ!」


 唖然とする王太子とそこから引っぺがされるように連れていかれるレーベル嬢。

 ざわつく会場ではやってきた大人たちが自分のこどもたちに駆け寄っていく。令息たちもおりてきて婚約者たちの手を取った。

 ただひとり、フレデリカ様を除いて。