「そもそも、なんでそんな話が出てるのよ! お兄ちゃん、教師としては評判悪くないじゃん!」
兄の専門は化学だ。このボンヤリした性格に似合わず、兄は教えるのが上手なのだ。私もその点においては正直、鼻が高い。
「教師として良いのは、当たり前なんだよ。みんな一流の予備校からきたり、引き抜かれたりしているんだし。でもそれにプラスアルファがいる」
「ナニソレ」
「部活だよ」
「あぁ……」
私はつぶやく。
「バスケ部がまだ県大会でもいい成績がとれていない」
「……」
それに責任の一端を感じるのは私もだ。
うちの学校は、成績がいいだけでなく、部活動も盛んで、どこの部も県大会どころか地方大会には最低でも出場している。特に全国大会で優勝したサッカー部顧問・谷崎先生には臨時のボーナスと特別休暇が付与されたらしい。なんてうらやましい話だ。
それはさておき、兄が顧問を務めるバスケ部は、この5年、つまり、兄が顧問となって以来、県大会でよくて5位。どん底ではないが、いい成績を収められているというわけではない。さらにうちの学校の優秀な他の部活から見ると、『ダメな部活』の一つなのだ。
ちなみに、兄はバスケ経験者で、バスケ部顧問としての素質もあるということで、この学校に採用された。私は微力ながらも兄を助けるべく、バスケ部マネージャーとして日々頑張っている。バカ兄を持つ妹は大変なのだ。