バスで学校まで帰る。
 時刻は夕方に差し掛かっていた。

 バスを降りた瞬間、兄に腕を掴まれ、

「逃げろ、ひより」
「お兄ちゃん」
「……兄ちゃんのことはいいから」
「そもそもお兄ちゃんのせいでこうなってるんだけど」

 私が言うと、兄はまっすぐ私を見る。

「でもな、ひより」
「なに?」

 私が兄を見つめると、兄はすごくまじめな顔で、

「日比谷会長の孫、確実に将来有望。そして、俺も含めて食いっぱぐれる心配なし。焼肉も食べ放題。どうやらアイスマンは、もう少ししたら秘書に戻るらしい。そしたら、アイスマンの後釜は俺になるかも。お前さえ心を許せば、きっと兄は大出世だ。兄ちゃんはこの恋、大賛成だぞ」

と言ったのだった。


「このクソバカ兄が!」

 私は叫ぶと、その場から走り去った。