「私はそんなどこの馬の骨ともわからない人間との交際には当初反対でした。だから私はつい、あなたとあなたのお兄さんに強く当たってしまったのかもしれませんね」

　校長先生はつづける。「まさかそれでアイスマンと呼ばれていようとは……」

「ひっ！　す、すみません！」

　蓮め、バラしたな！
　でもたしかに、先ほどから、校長先生は全く今までと雰囲気が違う。

「いえ、こちらこそ、申し訳ありませんでした」

　今は、目の前の校長先生が、優しくて、少し気が弱いような男の人に見える。
　あの時、私の手に蓮が口づけた時、顔を真っ赤にした校長先生の方が、素の状態に近いようだ。

「だから、蓮さんとのことも、真剣に考えてみてください」

　そう言われて、私はぎゅっと唇を噛む。
　兄はそんな私を見て、私の手を取ると、

「そろそろ行かないといけないので。続きはまた今度ゆっくり」

と頭を下げてその部屋を出た。