確かに帰り道はすごく暗くなっていて、一人で帰るには不安だっただろう。
 私は蓮の隣を歩きながらそんなことを考える。蓮はその長い足でゆっくり歩いて、私に歩調を合わせているようだった。

「いつも先生は、帰り遅いの?」
「うん、教師って大変なんだね。しかもお兄ちゃん、要領いいほうじゃないし」
「まぁ確かに。でも授業はわかりやすいよね」

 そんなことを言われて、私は嬉しくなった。
 蓮ってあんまり褒めることないから、お兄ちゃんのこと褒められて、嬉しくなったのだ。


「でも、突然、部活でてくれって頼まれるなんて、何かあったの?」

 蓮は言う。
 私は少し考えると、

「うん……アイスマン、いや、会津校長がバスケ部は弱いからなんとかしろって」
「そっか……。ってか、さっきの『アイスマン』って何」
「私、あの校長に見られると身が凍りそうになるの。お兄ちゃんもみたい。だから、『アイスマン』って二人で呼んでるの」

 私が言うと、蓮はゲラゲラ笑いだした。

「おもしろすぎる!」
「え? そう? ぴったりだと思うけどな」
「で、そのアイスマンにクビをちらつかされて、あんなことしたんだ。大和先生らしい」

 なぜか涙を流しながら笑う蓮を見ながら、私はきゅ、と自分の手を握った。
 なんだか、私は恥ずかしくなって、いたたまれなくなったのだ。