「はぐれないようにしてね?」
そう言って、光は僕が着ている浴衣の裾を掴んだ。
「大丈夫だよ」
「でも、はぐれたら大変だし…」
そう光が言い、距離は近くなる。
「光は心配し過ぎだよ」
「だめかな?」
とても優しい声で光は言う。
僕はその声が、大好きだった。
「別にだめって訳じゃ無いけど…」
その言葉で光は微笑んだ。
「そっか」
その笑顔が、無邪気に笑う光の笑顔はとても…
「あ、花火始まっちゃうよ!」
「…闇夜(あんや)どうしたの?顔真っ赤だよ?」
光が心配そうに僕の顔を見つめていたから、顔が真っ赤になっていたのだろうか。
「べ、別に!光、行くよ!」
「待ってよー」
これ以上、光に顔を見られたくなかった。
だから顔が見れないように少し早足で歩く。

「ついたー!」
ここは、花火がよく見える光と僕の秘密の場所だ。
「ふぅ…」
そう言って、光が近くにあった岩に座る。
僕も光と同じように近くにある岩に座る。
そうして落ち着いていると…
ドーン
とても大きな音が鳴った。
「綺麗…」
光は打ち上がった花火を見ながら言った。
僕も綺麗だと思った。
だけど、花火を見ている光もとても綺麗だった。
光の着ていた白色の浴衣が輝いているように見えて…
でも、その事は光に言えなかった…
「光!」
「はい!…え、えっと、どうしたの闇夜?」
思わず叫んでしまった。
でも、いつかは言わないといけない言葉だ…
でもやっぱり、言えない。
「え、えっと…花火!花火綺麗だね!」
わざとらしかっただろうかと思ったが
光は一瞬だけ驚いた顔を見せただけで、また優しく微笑み 
「うん、綺麗…」
と言った。
「あ」
ドーン バーン ドン
光が空を見上げると、いっぱいの花火が打ち上げられていた。
僕はこの時間が終わってほしくないと思った。
「……花火、終わったね」
「うん」
もう、終わってしまう…
光と一緒にりんご飴を食べ、金魚すくいをした。
一緒に歩いて、喋ったりもした。
そんな何気ない事でも僕はとても楽しかった。
光が、いてくれたから。
「帰ろうか」
「そう、だね」
この時間が終わってほしくない気持ちもある。
でも、明日も明後日も光と喋ったりする。
その日常が、ただの平凡な日常が楽しみで早く明日になってほしいという気持ちもあった。
…でも、光に好きと言いたい。
このまま言わずに後悔したくない。
大切ないつもの日常が壊れてしまうかもしれない。
そんな事を考えながら道を歩く。
でも僕は…
「光!僕、光の事が…」
「す…」
ピーーーーーーー
あ、え?
僕には理解が出来なかった。
人の叫び声
車の音
光の赤い浴衣の意味も