「わたしは、1人でいるから……」
彼との手を離そうと引っ張ろうとした。
けれど、そのことを察していたのか彼の力が強すぎて離れられない。
「1人ぃ?」
彼は不気味に笑ってから、
「ダメだよ」
と言った。
「だって、俺が耐えられないもん……」
「でもっ、いずれ他に好きな人できると思うよ……?」
「嫌だよ。志津香しかいないんだもの。志津香みたいな可愛いプリンセスを、1人にできないね」
付き合っていた時と同じように、お姫さま扱いしてくれる彼だけど。
今は、素直に喜べない。
「もう離してっ……」
「何言ってるの。二度と離すわけねえだろ」
「え? え?」
口を歪ませて、くくく、と笑う彼。
「まだ理解できないの? バカだねぇ、そんなとこも好きだけど」
そう言ってから、彼はもう片方の手でわたしの手を包み込んだ。
「俺は一生手放さない。だって、怒ってる顔だって、泣いてる顔だって、可愛いんだから。どんな男が欲しがっても、譲らないよ」
彼が、こんなにもわたしを離そうとしない理由が全然分からない。
ただ、1つ分かったことは。
わたしは、もう1人にはなれない、ということだ。