「美味しい?驍」

「うん、すごく美味い、琴葉の手料理食ったの久しぶりだな」

「はい、お水、驍、お水ないと食事食べられないなんて子供みたいだよね」

「そんな事ねえよ、大人だって水飲みながら飯食うやついるだろう」

「はい、はい、そう言う事にしておいてあげる」

ニッコリした琴葉に吸い込まれるように、俺は琴葉を引き寄せた。

琴葉は俺の胸に顔を埋めた。

「驍」

俺は自分の名前を呼ばれて、思わず琴葉を抱きしめてしまった。

そして、琴葉と見つめあい、唇が近づいた。

あと数センチと距離が縮まり、俺は我に帰った。

俺は今何をしようとしたんだ。

俺と琴葉、いや違う、中村と琴葉がキスするところだった。

「ごめん」

俺は琴葉から離れた。

「驍でしょ?」

「ごめん、答えられない」

俺は琴葉のアパートをあとにした。



俺は自分の行動にゾッとした。

中村の姿の俺が琴葉にキスをしようとしてしまった。

琴葉はどう思っているのだろうか。

やはり、中村が好きなのか?


中村は俺が離れたあと、頭がぼーっとしていた。

しばらくして、琴葉のアパートを訪ねた。

「どうでしたか、やはり海斗でしたか?」

「多分そうだと思います、ただ、驍かどうか聞いたんですが、答えて貰えなかったです」

「そうでしたか」

「でも、驍が好きな銘柄のコーヒーと私の好きな銘柄のお茶を買ってきてくれたんです」

「なんか事情ありそうですね」

中村は琴葉のアパートを去った。