琴葉は一人で泣いていた。

もし、俺が霊体でなかったら、抱きしめる事が出来るのにと悔やまれる。

俺が琴葉に近づくと、琴葉は俺に気づいて「霊体さん?」と声をかけてくれた。

俺はそっと琴葉を抱き上げた。

琴葉は宙に浮いて俺の存在を確認した。

「私が泣いていたから、慰めに来てくれたんですか?」

そうだよ、放っておけるわけがないだろう。

「ありがとうございます」
えっ?俺の言葉がわかるのか。

「霊体さん、多分、そうだよって言ってくれましたよね」

琴葉はふふっと笑って俺がいるであろう方向へ手を伸ばした。

俺も琴葉の手を掴もうと伸ばしたが、二人の手は交わることはなかった。

「私、ちゃんと霊体さんの手に触れていますか?」

うん、琴葉の手をちゃんと感じてるよ。

次の瞬間、琴葉は予想を遥かに超えた言葉を発した。

「さっき、喫茶店で驍の会社の同僚の方とお話したんですが、あの方の中に霊体さんが入ってたのかなって、思ったんですけど、違いましたか?」

ギクっとして、俺は狼狽えた。