琴葉は先に来て席に座っていた。

「お待たせしました」

琴葉は俺をじっと見つめて「お話しってどんな事でしょうか」と、落ち着いた様子だった。

「海斗と連絡つかない理由ですが、海斗は事故で亡くなりました」

俺は淡々と事の事情を琴葉に伝えた。

琴葉は大きく深呼吸をしてから口を開いた。

「そう言ってくれと頼まれたのですか」

「えっ?」

「私は海斗さんに振られたんですよね」

「違う、ふったんじゃないよ、今でも愛してる」

俺は中村だと言う事をすっかり忘れていた。

琴葉は不思議そうな表情で俺を見つめていた。

しまった、俺は中村だった。

「あ、いや、その、海斗が今でも琴葉さんを愛しているって事」

「もう、結構です、お話はそれだけでしょうか」

えっ?、信じてないのかよ、結構ですって、どう言う事?

「海斗が亡くなった事、信じてくれないのか」

「信じられるわけないじゃないですか、別れる理由に思いついたんじゃないですか」

「そんなわけないだろ、俺がどんなに琴葉を愛していたか、伝わってなかったのかよ」

「あなたは驍なの」

俺は興奮して、またしても自分の言葉として話してしまった。

「いや、違う、その、なんて言うか……」

もう、俺は支離滅裂になってしまった。

「海斗のうちに行けば信じて貰えるから、これから行こう」

俺は琴葉の腕を掴み、喫茶店を出た。