「ごめんなさい、ご迷惑ですよね」

そんな事ないよ、俺は琴葉が俺を、いや、霊体を感じてくれる事に感激してる。

琴葉は俺がいるであろう方向をじっと見つめた。

俺は琴葉の頬を両手で触れてみた。

琴葉が俺を感じてくれたような表情を見せた。

俺はそっと琴葉の唇にキスをしようと試みる、二人の距離が縮まる。

一瞬、琴葉が目を閉じたように思えた。

俺は琴葉にキスをした。

触れている感触が全く感じなかったが、不思議と気持ちが高揚した。

琴葉はゆっくりと目を開いた。

俺はその場を離れた。

これ以上琴葉の側にいることは、俺の理性がもたないからだ。

琴葉は俺の気配が消えた事を感じ取った。

そして、何度も何度も俺の名前を呼んだ、俺に届かない声で……

この時、琴葉が霊体を俺だと思い込んだことなど知る由もなかった。