琴葉は俺に振られたと思い込んでいる。

確かに霊感は他の人間より感じるんだろう。

しかし、まさか俺とは思っていない。

また、中村の身体を借りるとするか。

霊体が俺だと言うことは伝えられない。

でも、振られたんじゃないと言う事実は伝えたい。

俺は仮の姿の元に戻った。

琴葉が泣いている様子が感じられた。

俺は矢も盾もたまらず霊体で琴葉の元に飛んだ。

琴葉!

泣いていた琴葉は俺を感じたのだろう。

顔を上げて、涙を拭い、辺りを見回した。

「霊体さん?」

琴葉はキョロキョロして、俺がいる方向に視線を向けた。

まるで俺の姿が見えるみたいに、俺を見つめて来た。

「琴葉」

俺は思わず琴葉を抱き上げた。

一瞬びっくりしたようだが、でも確実に俺が、いや、正確に言えば琴葉を助けた霊体がその場に存在する事を確信したようだった。

「ごめんなさい、一人でいると寂しくて、涙が溢れてくるんです、あっ、もう下ろしてもらっていいですか」

俺は琴葉を下ろした。