琴葉は言葉を続けた。

「朝、仕事場に驍の会社の方が来て、驍の事を伝えようとしていたの、私は振られたと思っていたから邪険にしちゃって、驍の身に大変な事が起きているの?」

琴葉、今の俺は何も答えてやれない。

「驍、私の手を握って?お願い」

俺は言われた通り琴葉の手を握った。

すると、思っても見ない事が起きた。

琴葉は目を閉じて、俺を感じていた。

「驍、暖かいよ、驍を感じるよ」

琴葉は目にいっぱいの涙を溢れさせて俺がいるであろう方向を見つめた。

マジかよ。

「驍、アパートに着くまで一緒にいてね」

琴葉はそう言うとアパートへ向かって歩き出した。

アパートに着くと、琴葉は自分の気持ちを俺に伝えた。

「ありがとうございました、私を助けてくれて、私の茶番に付き合ってくれて、どなたか存じませんが、感謝します」

えっ?俺だよ、琴葉。

俺は声を張り上げて叫んだ。

でも俺の声は琴葉に聞こえない、俺の姿は琴葉に見えない。