俺はその場から咄嗟に離れた。

仮の姿の俺が琴葉に俺の死を伝えるのは不自然だ。

また、仮の姿の俺と関わりを持つ事は俺の意に反するからだ。

次の日、俺は中村の身体を借りる事にした。

中村、悪いな、身体を貸してくれ。

俺は中村の身体に入った。

琴葉のコンビニに向かった。

レジに並び「浜咲琴葉さんですよね」と声をかけた。

「はい」と琴葉は答えてくれた。

「俺、海斗と同じ職場の中村と言います、海斗と連絡取れなくなったと思うんですが」

そこまで言うと琴葉が俺の言葉を遮った。

「もう、海斗さんとは関係ないんでお話することはありません」

琴葉はそう言うとテキパキとレジを済ませ「次の方どうぞ」と俺の言葉を聞こうとはしなかった。

俺は唖然とした。

俺の死を知らないまま、俺との愛に不信感を抱いたまま、俺との愛を無かった事にしようとしている。

それでいいのか、いいわけない。

俺は一旦中村の身体を離れた。
中村、ごめんな。

中村は頭がぼーっとしているようで、自分の記憶を探っていた。

「僕は、なんでコンビニにいるんだ、まずい、遅刻だ」

中村は走って会社に向かった。