浜咲 琴葉 三十五歳。

コンビニでバイトの日々を送っていた。

ある日突然店に一人の男性が客として現れた。

その男性は毎日缶コーヒーを一本買って行く。

そして声をかけられ、デートに誘われた。

海斗 驍 二十三歳。

彼はいつも甘い言葉を囁く。

私より一回りも年下の彼の言葉を鵜呑みにはしなかった。

でも、彼との時間は心地よい。

彼といるとドキドキして心臓の鼓動が半端ない。

私はこの年まで、男性との付き合いは何度かあるが、消極的な性格のため前に進めない。

そう、私は経験が無い。

だから、余計に身構えてしまう。


はじめて彼が私のアパートに泊まった日、二人は結ばれた。

でも、いつ、別れる事になってもいいように、私は溢れるばかりの彼への愛情を封印していた。

次の日から、彼と連絡が取れなくなった。

店にも来ない。

やっぱりと不安は的中した。

それから私はある日を境に不思議な出来事に遭遇するようになる。

横断歩道を渡ろうとした時、信号が赤なのに、車が突っ込んで来た。

私は咄嗟の出来事に対応出来ず、その場に立ち尽くした。

もう、ダメと覚悟を決めた時、身体がふわっと宙に浮いた。

そして、私の身体は車道から歩道へと移っていた。

誰かが抱き抱えて私の身体を下ろしたように感じた。

でも誰もいない。

私は間一髪危険を回避出来た。

何が起きたんだろう。