剣と剣が激突する。

 叩き合い。
 押し切ろうとして。
 交差する。

 何度も何度も剣を交わしているのだけど、でも、決着がつくことはない。

「くっ!」
「むぅ!」

 僕が前に出れば、ゼノアスも前に出る。
 僕が後ろに退くと、ゼノアスも同じタイミングで距離を取る。

 僕達の戦い方はとてもよく似ている。
 いや。
 というよりは、僕の戦い方がゼノアスに似てきたんだろう。

 彼は超一流の剣士だ。
 すでにその力、戦術は完成されている。

 一方で、僕はまだまだ未熟者。
 学ぶべきことは多い。

 ただ……
 足りない部分を今、まさに学習していた。
 ゼノアスと剣を交えることで、体で覚えていた。

 結果、少しずつだけど彼に追いつき始めた。
 動きが最適化されていき、無駄な動作が消えていく。
 完成された動きを身に着けていく。

「驚きだな」

 剣を交わしつつ、ゼノアスが言う。

「まさか、この戦いの中でさらに成長するとは」
「お礼を言うべきなのかな?」
「むしろ、俺が言うべきだな。貴様のような好敵手に出会えたこと、感謝しなければならない」
「僕としては、あまり嬉しくないけど……ね!」

 体を回転させて、その勢いを利用してゼノアスの剣を上に弾いた。
 剣を飛ばすことはできなかったけれど、彼はわずかに体勢を崩す。

 そこを狙い剣を走らせるものの、わずかに届かない。
 偶然避けられた、というわけじゃない。
 ゼノアスはこちらの攻撃を見切り、反撃に転じやすいように、ギリギリのところで避けているのだろう。

「あなたは本当にすごい剣士だ」
「それだけの修練は重ねてきたつもりだからな」
「それなのに、黎明の同盟なんてところにいるのは残念」
「今更、説教をするつもりか?」
「ううん」

 正直なところ。
 今、この瞬間は、黎明の同盟とかどうでもよくなっていた。

 頭にある想いは二つ。
 大事な人を守る。
 そして……この人を超えたい。

「ちょっとだけだけど、あなたの気持ちがわかったかも」
「ほう?」
「あなたと戦って、そして、勝ちたいと思う」

 この人は壁のようなものだ。
 突然、目の前に現れて行く手を塞いで……
 強引に足を止められてしまい、どうすることもできなくなってしまう。

 一時は絶望した。
 恐怖に負けて、体を縮こまらせるしかなかった。

 今も恐怖はある。
 でも、それ以上に勝ちたいという気持ちの方が強い。

「いくよ」

 深く集中。
 そして、足に力を込めて地面を蹴る。

「紅」

 超高速の突き。
 しかし、ゼノアスはそれすらも対応してみせて、必要最小限の動きで避けてみせた。

 でも、僕の攻撃は終わらない。

 ガンッ! と音がするくらい地面を踏みしめて、体を捻り、強引に姿勢を変化させた。
 頭を低く。
 そして、体全体を前に。

 紅を攻撃のためじゃなくて移動のために使ったのだ。
 そうして、うまくゼノアスの懐に潜り込むことができた。

 そして……

「このぉっ!!!」

 剣を一閃させた。