ギィンッ!!!

 鋼と鋼が激突する音が響いた。

 ソフィアの聖剣とゼノアスの魔剣。
 真正面から激突したそれは、周囲に衝撃波を飛ばすほどの威力を放つ。

「くっ」
「むぅ」

 剣と剣を交差させて競り合う。
 互いに全力。
 一片たりとも出し惜しみはしていない。

 それでも……

「ちっ」

 わずかにソフィアが押され始めた。

 ゼノアスの巨体から繰り出される力はソフィアの上をいく。
 さらに巨大な魔剣から生まれる力も聖剣の上をいく。

 力比べをしていたら勝てない。
 そう判断したソフィアは、全身を使って剣を押し込んで……
 途中、ふっと力を抜いた。

「むっ」

 ゼノアスが魔剣を振り抜いた。
 しかし、ソフィアはすでに安全圏に退避している。
 一歩間違えばそのまま両断されていたけれど、そこは剣聖というべきか。
 並外れた動体視力、身体能力でゼノアスの攻撃を回避してみせた。

「破山!」

 真横に回り込み、全力の一撃を叩きつける。
 巨大な岩を断つ剣技。
 人に向ければ跡形も残らないだろうが……

「……あなたは化け物ですか」

 ソフィアの技を食らい、ゼノアスは吹き飛んだ。
 近くの木に激突して、幹をへし折る。

 しかし、それだけ。
 体が粉々になるということはなくて、わずかに切り傷ができただけ。
 ゼノアスはゆっくりと立ち上がる。

「狙いは読めたからな。脇腹に気を集中させて防いだだけだ」
「あの一瞬でそんなこと、普通できるわけがないんですけど……まったく、非常識ですね」
「俺の剣をあのような方法で避けたお前に言われたくない」

 ゼノアスは小さく笑う。

「だが、悪くない」

 改めて剣を構えた。

「その力、素晴らしい。さすが剣聖と呼ばれているだけのことはあるな。斬る甲斐がある」
「……一つ聞きたいんですけど、いいですか?」
「なんだ?」
「あなたは、どうして戦うんですか?」
「己の存在を証明するために」

 その意味がわからず、ソフィアは眉をひそめた。

「俺は戦うことしか知らない。他の生き方はできない」
「なるほど……だから、戦うことが己の存在意義になると? そうすることで、自分がいたことの証明になると?」
「そうだ。戦うことしかできない男だからな」
「それで、いいんですか?」
「構わない」

 そう答えたゼノアスに迷いはない。
 まっすぐソフィアを見て、静かな闘気を放つ。

「いつまでも戦い続けて、そして、いつか倒れる。それこそが俺の望みであり願いだ」
「なんて厄介な夢を……できれば、私達を巻き込まないでほしいんですけど」
「無理な相談だな。お前が強者である以上、避けては通れない道だ」
「やれやれ」

 ソフィアは呆れるような吐息をこぼした。
 それから、改めて剣を構える。

「なら、戦うしかないですね」
「そうだな」
「……いきます」
「楽しもう」

 そして……最強と最強が再び激突する。