レナの刃が僕に迫る。
 それを避けることはできない。
 防ぐこともできない。

 どうすることも……できない。

 ギィンッ!!!

 横から剣が割り込んできて、レナの刃を受け止めた。
 その剣は見覚えがある。

 聖剣エクスカリバー。

 剣聖だけが持つことを許される剣。
 そして、その主は……

「ソフィア!」
「まったく……少し目を離した隙に、とんでもないことになっています……ねっ!」
「くっ!?」

 ソフィアは前に踏み込み、回転。
 その威力を乗せて剣を薙ぎ払い、レナを吹き飛ばした。

 とても強引な力技。
 でも、だからこそ抵抗することは難しい。

 ただ、レナは猫のようにしなやかに着地。
 まったくダメージはない様子だった。

 レナは座った目でソフィアを睨みつける。

「ボクとフェイトのデートに邪魔するなんて、野暮がすぎないかな?」
「今のがデートなのですか? だとしたら、相当に女子力が低いですね。そのようなデートでは、殿方を楽しませることはできませんよ」
「このっ……!」

 苛立っている様子で、レナの視線がさらに鋭くなった。

「えっと……ソフィア? 助けてもらったことはうれしいんだけど、あまり挑発するようなことは……」
「挑発なんてしていませんが?」
「え? じゃあ、今のが素?」
「はい」

 たぶん、本気で言っているのだろう。

 ソフィアは、そんなに好戦的な性格じゃないけど……
 レナが相手だと、無意識でスイッチが切り替わってしまうのかな?

 色々な意味でライバルだから、そうなるのも仕方ないとは思うけど。

「邪魔しないでくれる?」
「イヤです」
「……」
「私はフェイトのパートナーです。この座は、あなたに譲るつもりは毛頭ありません」
「……フェイトも同じ考えなの?」
「うん」

 即答した。

「レナには悪いけど……でも、ソフィアが僕のパートナーだよ。他の人は考えられない」
「……どうして」

 レナがぽつりとつぶやいた。

「小さな幸せが欲しいだけなのに……がんばりたいだけなのに……なんで、なんで、なんで……」
「レナ……?」

 レナは、がしがしと自分と頭をかいた。
 剣を持ったままなので、時々、自分を傷つけてしまう。
 それでも手は止まらない。

「どうしてどうしてどうして……なんで宗家の連中ばかり……!」
「宗家……?」

 ソフィアが眉を潜めた。

 そういえば……
 レナが使う技、神王竜にとてもよく似ているけど、なにか関係性が?

「そっか」

 ややあって、レナは動きを止めた。

 とても無機質な瞳をして……
 それは、なんの感情も宿していなくて……

 ぽつりと言う。

「奪われるなら、先に奪っちゃえばいいんだ」
「「っ!?」」

 瞬間、殺気の嵐が吹き荒れた。
 質量を持つほどの圧倒的なオーラ。
 気をしっかりと保っていないと、一瞬で意識を刈り取られてしまいそうだ。

「なんていう力……フェイト。ここは私がなんとかするので、フェイトは……」
「僕も一緒に戦うよ」
「フェイト!? ですが、それは……」
「僕はパートナーだからね」
「……あ……」
「だから、一緒に戦うよ」

 そう。
 僕達は二人で一つなんだ。

「いこう、ソフィア」
「はい!」