「くぅっ!!!?」

 前に倒れ込むようにして身を低くした。
 それと同時に、ほぼほぼ勘で後ろに剣を振る。

 ギィンッ!

 流星の剣とティルフィングが交差した。

 前回は叩き折られてしまったけど、今回は無事だ。
 剣の力は互角みたいで、十分に耐えている。

 問題は……
 僕の力が足りないこと。

「このっ!」

 剣を斜めにして、刃を滑らせる。

 わずかだけど余裕ができた。
 その間に後方へ……

「いや、前だ!」
「へぇ」

 レナの力量は、僕よりも圧倒的に上。
 下手に逃げようとしたり防御に徹しようとしても無駄だ。
 すぐに押し切られてしまうはず。

 なら、危険を覚悟で懐に飛び込むしかない。

 リスクは大きいけどリターンもある。
 うまくいけば僕の攻撃も当たるかもしれない。

「はぁっ!!!」

 踏み込むと同時に突きを放つ。
 避けられてしまうけど、それは予想済。

 下半身のバネを使い、そこから強引に剣の軌道を変える。
 横へ薙ぎ払い、続けて縦に跳ね上げた。

 定石にはない軌道で刃を叩き込むのだけど、

「やるね」

 レナは全ての攻撃をあっさりと受け止めてみせた。

 定石にない戦いなら、むしろ得意。
 その程度? と言っているかのようだ。

「次はボクの番だね!」
「うぁ!?」

 腹部に走る衝撃と痛み。
 たぶん、蹴りを食らったんだと思う。

 まったく見えなくて……
 どうすることもできず、僕は後ろに吹き飛ばされてしまう。

 そこにレナの追撃が襲う。

「真王竜剣術・裏之三……大蛇!」

 視認できないほどの速度でレナが剣を振る。
 衝撃波が生まれ、獣のように襲いかかってきた。

 避けられない!
 防ぐこともできない!

 なら……迎え撃つ!

「神王竜剣術・壱之太刀……破山!!!」

 渾身の一撃を繰り出した。
 ただ、それでも衝撃波を相殺するので精一杯。

 レナが突貫。
 一瞬で目の前にやってきて、刃の嵐を見舞う。

 ダメだ。
 一撃一撃の威力が高い上に、なによりも早すぎる。

 防ぐのがやっと。
 反撃に転じる間を作ることができない。

「くっ……!!!」

 必死に防いで。
 ギリギリのところで避けて。
 命の危機をヒシヒシと感じつつ、反撃の機会をうかがう。

 負けられない。
 間違えた感情で暴走するレナに、負けてなんていられない!

 僕が負けたら……
 負けたら……
 大事な人が傷つくかもしれないんだ!!!

「こっ……のぉおおおおお!!!」
「えっ」

 レナに隙なんてない。
 それでも、あえて前に出た。

 刃が左肩をえぐり、鋭い痛みが走る。
 でも、こちらから前に出たせいでタイミングが狂ったらしく、そのまま切断、なんてことにはならない。
 うまい具合に骨で受け止めることができた。

「神王竜剣術・参之太刀……」
「しま……!?」
「紅っ!!!」

 全身全霊の一撃を至近距離で放つ。