たくさん泳いで、たくさん遊んで。
喉の乾きを覚えたアイシャは浜に戻った。
おとーさんとおかーさんに、飲み物を買ってもらおう。
あと、できれば甘いお菓子を食べたい。
かき氷がいいな。
冷たくて甘くておいしい。
頭がキーンとするところも楽しい。
そんなことを思いつつ、両親の姿を探すアイシャなのだけど……
「あれ?」
二人の姿が見当たらない。
正確に言うのならば、どこにいるのかわからない。
先日と比べると、海水浴場は混んでいた。
倍近い客がいる。
そのせいでフェイトとソフィアが隠れてしまい、アイシャは見つけることができないでいた。
「おとーさん? おかーさん?」
呼びかけてみるものの、返事はない。
ちなみに……
リコリスは呼ばれていない。
ただ単に忘れているだけなのか、そもそもリコリスに頼るということをしないのか。
どちらかなのか、それは謎だ。
「おとーさん……おかーさん……」
アイシャはあちらこちらを歩き回り、二人の姿を探す。
しかし、そのせいで余計に二人がいる場所から遠ざかってしまい……
さらに、今自分がいる場所もわからなくなってしまう。
犬耳がシュンと垂れ下がる。
尻尾は落ち着きなく揺れていた。
「うぅ……」
気がつけば浜辺を越えて、見知らぬ路地に移動していた。
当然、誰もいない。
浜辺に戻ろうとしても、その路地は入り組んでおり、迷路のようだった。
戻ることができず、どんどん街の深部に迷い込んでしまう。
「おとーさぁん……おかーさぁん……」
不安と恐怖がどんどん蓄積されていき……
ついに限界点を超えて、アイシャはポロポロと涙をこぼしてしまう。
本当に家族と離れ離れになり、一人になった時のことを思い出した。
誰もいない。
自分一人だけ。
近くの大人は怖い人。
おとなしくしていないと鞭で打たれた。
ごはんを食べさせてもらえなかったことも多々ある。
「ひっく、ひっく……うぅ、うあぁあああーーーん!」
奴隷だった頃の不安と恐怖を思い出してしまい、アイシャは我慢できずに大泣きした。
「おとうさーん! おかあさーん! リコリスぅー!」
大事な人達を呼ぶものの、姿を見せてくれない。
悲しい。
寂しい。
怖い。
負の感情が連鎖して、アイシャの心を蝕んでいく。
アイシャはなにもすることができず、ただ泣くことしかできない。
……そんな時だった。
ガサッ。
「ひぅ!?」
物陰で音がした。
アイシャは怯え、その場に尻もちをついてしまう。
そんな彼女に狙いを定めるかのように、物音を立てた主が飛び出してきた。
ソイツは風を切るような速度で走り、アイシャに向けて突撃をして……
「オンッ!」
目の前で急ブレーキをかけて、元気よく鳴いた。
「……わん、ちゃん?」
「オンッ!」
小さな犬だった。
アイシャでも抱っこできそうなくらいのサイズだ。
ただ、その毛は銀色に輝いていて、瞳はエメラルドグリーン。
そんな犬種は存在しない。
しかし、そんなことを知らないアイシャは子犬を警戒することはない。
むしろ子犬の愛らしさに心奪われてしまい、不安や恐怖を忘れて笑顔になる。
「わぁ……わんちゃん、かわいいね。おいで?」
「クゥーン」
子犬は人懐っこく、アイシャに顔をスリスリした。
その仕草はとても愛らしく、アイシャは自分が置かれている状況も忘れて、瞳をキラキラと輝かせた。
「かわいい!」
「ハッ、ハッ、ハッ」
アイシャにぎゅっと抱きしめられるものの、子犬は嫌がらない。
むしろ喜んでいる様子で、尻尾をぶんぶんと横に振っていた。
「オンッ、オンッ!」
スルッとアイシャの腕から抜け出した子犬は、トテトテと歩いて、少し行ったところで振り返る。
アイシャがついていくと、さらに子犬は歩いて……
一定のところで止まり、振り返る。
こっちへ来て? と言っているかのようだ。
「えっと……?」
「オンッ!」
「あ、まって」
子犬に誘われるまま、アイシャは街の裏路地を後にした。
喉の乾きを覚えたアイシャは浜に戻った。
おとーさんとおかーさんに、飲み物を買ってもらおう。
あと、できれば甘いお菓子を食べたい。
かき氷がいいな。
冷たくて甘くておいしい。
頭がキーンとするところも楽しい。
そんなことを思いつつ、両親の姿を探すアイシャなのだけど……
「あれ?」
二人の姿が見当たらない。
正確に言うのならば、どこにいるのかわからない。
先日と比べると、海水浴場は混んでいた。
倍近い客がいる。
そのせいでフェイトとソフィアが隠れてしまい、アイシャは見つけることができないでいた。
「おとーさん? おかーさん?」
呼びかけてみるものの、返事はない。
ちなみに……
リコリスは呼ばれていない。
ただ単に忘れているだけなのか、そもそもリコリスに頼るということをしないのか。
どちらかなのか、それは謎だ。
「おとーさん……おかーさん……」
アイシャはあちらこちらを歩き回り、二人の姿を探す。
しかし、そのせいで余計に二人がいる場所から遠ざかってしまい……
さらに、今自分がいる場所もわからなくなってしまう。
犬耳がシュンと垂れ下がる。
尻尾は落ち着きなく揺れていた。
「うぅ……」
気がつけば浜辺を越えて、見知らぬ路地に移動していた。
当然、誰もいない。
浜辺に戻ろうとしても、その路地は入り組んでおり、迷路のようだった。
戻ることができず、どんどん街の深部に迷い込んでしまう。
「おとーさぁん……おかーさぁん……」
不安と恐怖がどんどん蓄積されていき……
ついに限界点を超えて、アイシャはポロポロと涙をこぼしてしまう。
本当に家族と離れ離れになり、一人になった時のことを思い出した。
誰もいない。
自分一人だけ。
近くの大人は怖い人。
おとなしくしていないと鞭で打たれた。
ごはんを食べさせてもらえなかったことも多々ある。
「ひっく、ひっく……うぅ、うあぁあああーーーん!」
奴隷だった頃の不安と恐怖を思い出してしまい、アイシャは我慢できずに大泣きした。
「おとうさーん! おかあさーん! リコリスぅー!」
大事な人達を呼ぶものの、姿を見せてくれない。
悲しい。
寂しい。
怖い。
負の感情が連鎖して、アイシャの心を蝕んでいく。
アイシャはなにもすることができず、ただ泣くことしかできない。
……そんな時だった。
ガサッ。
「ひぅ!?」
物陰で音がした。
アイシャは怯え、その場に尻もちをついてしまう。
そんな彼女に狙いを定めるかのように、物音を立てた主が飛び出してきた。
ソイツは風を切るような速度で走り、アイシャに向けて突撃をして……
「オンッ!」
目の前で急ブレーキをかけて、元気よく鳴いた。
「……わん、ちゃん?」
「オンッ!」
小さな犬だった。
アイシャでも抱っこできそうなくらいのサイズだ。
ただ、その毛は銀色に輝いていて、瞳はエメラルドグリーン。
そんな犬種は存在しない。
しかし、そんなことを知らないアイシャは子犬を警戒することはない。
むしろ子犬の愛らしさに心奪われてしまい、不安や恐怖を忘れて笑顔になる。
「わぁ……わんちゃん、かわいいね。おいで?」
「クゥーン」
子犬は人懐っこく、アイシャに顔をスリスリした。
その仕草はとても愛らしく、アイシャは自分が置かれている状況も忘れて、瞳をキラキラと輝かせた。
「かわいい!」
「ハッ、ハッ、ハッ」
アイシャにぎゅっと抱きしめられるものの、子犬は嫌がらない。
むしろ喜んでいる様子で、尻尾をぶんぶんと横に振っていた。
「オンッ、オンッ!」
スルッとアイシャの腕から抜け出した子犬は、トテトテと歩いて、少し行ったところで振り返る。
アイシャがついていくと、さらに子犬は歩いて……
一定のところで止まり、振り返る。
こっちへ来て? と言っているかのようだ。
「えっと……?」
「オンッ!」
「あ、まって」
子犬に誘われるまま、アイシャは街の裏路地を後にした。