そう、ここは前世とは違う。
たとえ記憶があったとしても、育ってきた環境が違えば、昔と違うことだって多いはずだ。
彼と婚約を決めたのは、ただ人生をやり直すだけでなく、エリックとして生きてきた彼をもっと知りたいと思ったから。そしてもう一度、恋をするため。
前世は確かに、自分たちの関係は秘密の恋人同士だったのだろう。だが、転生後の関係は記憶があるというだけで、ローゼリアの心はどこかちぐはぐだった。
彼に恋い焦がれる自分がいる一方で、それを客観視している自分がいた。まるで、誰かの恋物語を読んでいるみたいな感覚だった。
それでも、この人を好きになるという確信はあった。
だからこそ、シャーロットとしてではなく、ローゼリアとして彼に恋をするため、彼と婚約できるように手を尽くしたのだ。
今、自分に必要なのは時間だ。この小さな胸騒ぎに名前をつけるための。
「――ローゼリア様」
「はい」
「前世ではできなかったことをたくさんして、お互いのことを知って、未来もずっと一緒に過ごしていきましょうね」
「……はい!」
自分たちはもう王女と騎士ではない。
世間から見れば、ごくありふれた、ただの婚約者だ。それでいい。
(わたくしたちの関係はここから始まる。夢のような悲恋で終わる結末にはさせない)
前世はあくまで前世だ。今世の恋は今から育んでいく。
そして、あの夢の続きの結末を幸せな余韻で満たしていくのだ。
たとえ記憶があったとしても、育ってきた環境が違えば、昔と違うことだって多いはずだ。
彼と婚約を決めたのは、ただ人生をやり直すだけでなく、エリックとして生きてきた彼をもっと知りたいと思ったから。そしてもう一度、恋をするため。
前世は確かに、自分たちの関係は秘密の恋人同士だったのだろう。だが、転生後の関係は記憶があるというだけで、ローゼリアの心はどこかちぐはぐだった。
彼に恋い焦がれる自分がいる一方で、それを客観視している自分がいた。まるで、誰かの恋物語を読んでいるみたいな感覚だった。
それでも、この人を好きになるという確信はあった。
だからこそ、シャーロットとしてではなく、ローゼリアとして彼に恋をするため、彼と婚約できるように手を尽くしたのだ。
今、自分に必要なのは時間だ。この小さな胸騒ぎに名前をつけるための。
「――ローゼリア様」
「はい」
「前世ではできなかったことをたくさんして、お互いのことを知って、未来もずっと一緒に過ごしていきましょうね」
「……はい!」
自分たちはもう王女と騎士ではない。
世間から見れば、ごくありふれた、ただの婚約者だ。それでいい。
(わたくしたちの関係はここから始まる。夢のような悲恋で終わる結末にはさせない)
前世はあくまで前世だ。今世の恋は今から育んでいく。
そして、あの夢の続きの結末を幸せな余韻で満たしていくのだ。