11. チェックイン

 
  その日は、16時頃からチェックインのお客様で、フロントカウンターは賑わっていた。



  私がフロント事務所で作業をしていた時、女性スタッフから小池様が到着されたという知らせを受け、すぐにフロントカウンターへ出た。



  私はその時、初めて梨奈の両親に会ったわけだが、彼女の父親が何度も頭を下げられるため、逆に私は恐縮してしまった。



  「はじめまして、小池でございます。今日はお世話になります」と彼女の父が言うと、



  「いらっしゃいませ。お待ちいたしておりました。ご結婚20周年おめでとうございます」
 と私が言うと、彼女の父が少し驚いた表情をされたので、



  「実は、梨奈さんから、今日がご結婚記念日だと聞いておりました」




  「そうだったのですか? 今回はいろいろと皆様には、ご迷惑をおかけして申し訳なかったです。今日は大変楽しみにしています」



  「いえ、とんでもございません。本日は、ご家族でごゆっくりお過ごしくださいませ」と私は言った。



  「ご記帳は、どなたがされますか?」と私が聞くと、



  「梨奈が書いてくれる? きれいな字で書いてね」と彼女の母親が言ったため、


  「だったら、お母さんが書いてよ」



  「お前たち、ここまで来て喧嘩をしないでくれよ。恥ずかしいだろ」
と洋が言うと、二人は顔を見合って笑った。