なっ……なんで……っ。
なんで美輝さんが……っ。
隼理くんの部屋に来るの⁉
しかも私がいるのにっ。
って。
私がいないときでも絶対にダメッ。
……だけど……。
私がいるのに。
堂々と美輝さんを部屋に入れるということは……。
隼理くんは私に言うつもりなのだろうか。
『美輝と真剣に付き合っているから別れよう』と。
……嫌……。
隼理くんと別れるなんて……。
「隼理くん‼」
そう思ったら。
「お願い‼ 玄関のドアを開けないで‼」
とっさに隼理くんの腕を掴んでそう言っていた。
だけど。
いくらそんなことを言っても。
「どうした? 夕鶴」
別れ話を切り出されてしまうのなら。
「私と一緒にテレビ観てようっ」
遅かれ早かれ。
そう告げられてしまうのに……。
「夕鶴、俺もそうしたいけど、美輝が待ってるから」
ズキン……。
隼理くんのその言葉を聞いて。
胸の奥が何かに何回も突かれるように。
激しく痛み始めた。
『美輝が待っている』
その言葉は。
私にとって。
止めともいえる。
それくらい重みのある言葉だった。
その言葉を聞いたら。
一瞬で全身の力が抜け。
掴んでいる隼理くんの腕を力なく離した。