「あった、湿布」


 湿布が見つかり。
 安心した様子で芦達先生は棚から湿布を取り出した。


「神城さん、お待たせ」


 芦達先生は湿布を持って私のところに来てくれた。


「芦達先生、ありがとうございます」


 芦達先生にお礼を言って湿布を受け取ろうとした。


「いいよ、貼るよ」


 だけど。

 そう言ってくれた、芦達先生。


 芦達先生の言葉に。
 驚き過ぎて、すぐに声が出せなかった。


 芦達先生の優しさと気遣い。
 すごくありがたくて感謝している。

 けれど。
 いくらなんでも。
 湿布を貼ってもらうわけには……。


「ごめんね、貼るときに足を触ってしまうけど」


 そう思っている間にも。
 芦達先生は私の足に湿布を貼ってくれようとしている。


 驚き過ぎて声が出てこないなんて思っている場合ではない。

 早く芦達先生に言わなくては。


「あっ……芦達先生っ」


 なんとか声を出すことができた。


「先生に貼ってもらうなんて、そんなの悪いですっ。
 自分で貼りますっ」


 芦達先生にそこまでしてもらうなんて。
 そんなこと。
 ものすごく申し訳ない。

 そう思った。
 だから。
 それを伝えなければ、と思った。


「……嫌……だよね」


 けれど。


「今日、初めて話した(ひと)に足を触れられるなんて」


 芦達先生が。
 そんなことを言ったから。

 それを聞いた私は戸惑ってしまった。

 そういう意味で、そう言ったわけではなかった。
 本当に申し訳ないと思ったから。
 芦達先生に湿布を貼ってもらうなんて。


「そっ……そういう意味では……っ」


 だから。
 そう伝えているところだった。


「ならいいじゃない」


 のだけど。


「そんなにも気を遣わなくていいよ」


 気さくな感じで。
 芦達先生はそう言った。