私は、お姫様抱っこされている体勢のまま、手を伸ばして保健室の戸を開けた。

 芦達先生は「ありがとう」と言いながら保健室の中に入っていく。


「失礼します……って、
 あれっ、麻川(あさかわ)先生いないな」


 芦達先生はそう言って保健室の周りを見渡した。

 やっぱり麻川先生はいなかった。

 麻川先生は保健の先生。


「とりあえず、ここでいいかな」


 芦達先生はそう言って私を椅子に下した。


「芦達先生、ありがとうございました」


 私を保健室まで連れてきてくれた芦達先生にお礼を言った。


「いいよ、そんなこと、気にしないで」


 やさしく微笑みながらそう言ってくれた、芦達先生。


「えーっと、湿布はどこにあるのかな」


 芦達先生は棚や引き出しがある方へ向かい湿布を探し始めた。

 保健室に連れてきてくれただけではなく。
 湿布まで探してくれるなんて。


「芦達先生、湿布は自分で探しますから大丈夫です。
 本当にありがとうございました」


 これ以上、芦達先生にお世話になるわけにはいかない。
 そう思った私は芦達先生にそう言った。


「ダメだよ無理しちゃ。
 いいから、そのまま座ってて」


 芦達先生はそう言って、そのまま湿布を探し続けてくれている。


 優しい……。
 芦達先生は本当に優しい。

 心身ともに弱っているとき。
 こんなにも優しくされると。
 頼ってしまいそうになる。


 でも。
 やっぱりこれ以上、頼るわけにはいかない。

 だから。


「でもこれ以上、芦達先生にご迷惑をおかけするわけには……痛っ……‼」


 そう言って。
 椅子から立ち上がろうとしたけれど。
 その瞬間、激痛が走った。


「だから無理しないでって言ったでしょ。
 それに迷惑だなんて思ってないよ」


 …………。

 芦達先生……。

 優しい。
 本当に優しい……。