隼理くんには、私以外に美輝さんという女性(ひと)がいるのではという疑惑が生じてから。
 六日経った金曜日。



 どんなに疑惑を感じていても。
 どんなに気持ちが沈んでいても。

 必ず時は流れるし。
 学校や部活の日もやってくる。

 私は時の流れに沿って。
 ただただ淡々と日常生活を過ごしていた。


 今は放課後。

 私はいつものように部室へ向かっている。

 そのとき……。

 見たくなかった。
 本当は。
 でも、見てしまった。

 それは……。

 女子生徒が。
 隼理くんに。
 何かを話していた。

 隼理くんが担任をしているクラスの女子生徒だろうか。

 どちらにしても。
 その女子生徒は。
 やけに隼理くんに接近している。

 そんな光景を見ていると。
 ものすごく不快な気持ちになってしまう。

 不快になって。
 イライラして。
 ショックになって。
 苦しくて。
 悲しくて。
 それらの気持ちが一気に押し寄せて。
 それは、まるで大きな波のように。
 私を飲み込んでいく。
 そのせいで息ができなくなり。
 そのまま水面から上がってくることができなくなりそう。

 それだけでも、ものすごく苦しいのに。

 私は、さらに私を追い詰めることを思い出してしまう。

 それは。
 美輝さんのこと……。

 美輝さんの疑惑を抱いてから六日間。
 嫌でも美輝さんのことは頻繫に思い出されていた。
 そのたびに胸が締め付けられるような気持ちになった。

 そして今。
 またもや美輝さんのことを思い出してしまった。

 違う、たぶん。
 頭ではそう思っている。

 だけど。
 隼理くんと親し気に接している女性を見ていると。
 もしかして。
 その女性が美輝さんなのではないのか。
 そう思ってしまう。

 今、隼理くんと話している女子生徒だけではない。

 隼理くんと親し気に話している全ての女性が。
 美輝さんかもしれないと思えてくる。

 美輝さんの顔や年齢、どういう感じの女性(ひと)なのか全くわからない。

 だから。
 ある程度の年齢の女性。
 隼理くんと親し気に話している女性。
 そういう女性たちは全員、美輝さんかもしれないという対象になる。