「可愛い」


 えっ。


「そんなにも恥ずかしがって」


 えぇっ。


「めちゃくちゃ可愛い」


 えぇっ‼

 しゅっ……隼理くんっ。


 って。

 隼理くんっ。

 まだ服を着ていないのにっ。

 それなのに……っ。

 私のことをぎゅっと抱きしめたから……っ。


「きゃっ」


 思わずそんな声が出てしまった。


「そんな声を出して可愛すぎるだろ」


 かっ……可愛いなんて……っ。


「大丈夫、湯冷めなんかしないよ。
 こうしていれば充分温かいから」


 私はパジャマを着ているけれど。
 微かに伝わる。
 隼理くんの肌のぬくもりが。

 そのぬくもりに。
 私の胸の鼓動は高鳴りっぱなし。

 これ以上、高鳴り続けると。
 心臓がどうにかなってしまいそうなくらい。


「……しゅっ……隼理くんっ」


 心臓がどうにかなってしまいそうだから。
 少しでも早く隼理くんから離れないとっ。

 だから。


「でっ……でも、こうしていると朝ごはんを食べることができないよ」


 そう言って。
 隼理くんから離れようとした。

 のだけど。


「朝ごはん、いらない」


 隼理くんが。
 そんなことを言ったから。


「えっ⁉ 朝ごはん、いらないって⁉ 隼理くん、お腹空いてないの?
 私はお腹空いてるけど……」


 困ってしまって。


「腹は減ってる。
 でも夕鶴とこうしていたいからいらない」


 隼理くんにそう言われて。
 嬉しい。
 けれど。
 今は困ってしまうという気持ちの方が勝ってしまって……。


「でっ……でも、せっかく作ったし。
 それに隼理くんと一緒に食べたいな」


 隼理くんと一緒に食べたいのは本当。

 だけど今の私の気持ちは。
 説得という形の方が強い。


「……わかった。朝ごはん食べる。
 ……その代わり……」


 え……?


「その代わり?」