「ライブの打ち合わせに行かないで」


 えっ⁉


「隼理くん……⁉」


 私は隼理くんの言葉に戸惑ってしまった。


 一体どういうふうに返答をすればいいのか。
 そのことが頭の中でグルグルと回り続けている。


「俺のことでいっぱいなら、いいでしょ」


 隼理くんはさらに追い込むようにそう言った。


 私と離れたくないと思う隼理くんの気持ち。
 その気持ちは、ものすごく嬉しい。

 私も隼理くんと離れたくない。

 その気持ちは隼理くんと同じ。


 だけど。


「……隼理くん、隼理くんのことは、ものすごく大切。
 いつも隼理くんのことでいっぱい。
 隼理くんとずっと一緒にいたいし離れたくない」


「それなら」


「だけどね、仲間も大切。
 仲間で支え合って困難なことも乗り越えていく。
 それって、すごく大事なことだと思うの。
 仲間の絆というか……だから……」


 私の話を隼理くんは静かに聞いてくれていた。


 私はそのまま話を続ける。


「それにね、私たちのライブを良いって言ってくれる人たち。
 その人たちは私たちの歌を聴いて『元気が出る』って言ってくれるの」


 その言葉、すごく嬉しい。


「でもね、元気が出るのは私たちも同じなの」


 そう。


「『元気が出る』って言ってくれるおかげで私たちも元気が出る」


 いつも。


「励みにもなってる」


 元気をもらっているのは。


「その人たちに感謝してる」


 私たちの音楽を聴いてくれている人たちでもあるの。


「だから、その人たちの前で歌いたい」


 感謝の気持ちを込めて。


「だから、ね」


 お願い、隼理くん。